月食 vicious
ルーナ 夜が近づくと
君は陽気になるんだ
未だ秘密に守られた
雲隠れの月と同じように
宵だけに現れる神話の女神
数多の星と共にある
いとけなく愛らしく
無害に見えるその瞳が
多くを語らないその口が
人々を迷わせ 帰り道を忘れさせる
君の瞳に映し出された
幾千もの恒星は
ただの化学反応さ
理屈があるのさ いつだって
そんなものには惹かれなくていい
ルーナ 君は満ちては欠けてゆく
追いかけても歩幅は合わない
いつでも振り回されているんだ
君の退屈そうな視線
指先を眺めるだけでいい
欠けたネイル 乱れた髪と
肌に残るその傷跡を
不機嫌に早歩きするその背景を
誰より考えてしまうんだ
呼び止めずにいられないんだ
ルーナ 君がなにも手につかないほどに
すり減らしているときは
わたしが君を覆い隠そう
陰の中でただ 眠ればいい
いつか
わたしの内側で燃ゆる灼熱の太陽が
君を燃やし尽くしてしまうだろう