2022/10/11(火)〜2022/10/13(木)の感想と評になります。 齋藤純二
夢を見た 紫陽花さん 10/11
かっぱっぱー るんぱっぱーと歌が流れる昔のお酒CMを思い出してしまいました。そして上手に書かれていましたので拝読しながら映像として浮かんで来ましたね。
カッパと人間が共生している世界という、なんとも愉快な世界になっていますね。それも夢の話なので、語り部はかなりカッパに何か惹かれる魅力を感じていたのかもしれません。
カッパの国と日本との国交があり、綺麗なカッパはパブで接待をしてティという川魚を得て、泣き出したカッパも体を揺らし踊りだし、なんとも酒場の雰囲気も出しつつ面白く描かれています。上手。
「カッパ料理」の川魚、なんだか食べてみたいなあ、なんて思いました。しかし、人間の口に合うのかな……。
みんな同じに朝がくる
夜は今日のみんなの心を キラキラ星にして夜空に留める
そしてほーっと一息ついてから 朝にどうぞと空を譲っている
そこに目覚まし時計の音が混ざってきた
ここの表現が見事でしたね。酒場に夜明けが近づいて結んでい様子が見事でした。
ひとつ、最後の行で語り部(私)がショーガールになっていた、とあります。夢の話なのでなんでもありだとは思いますが、この語り部がショーガールとして語っている感じがまったくしないので、あれっ、と。この一行、要らない気がします。
それにしても楽しませてくれる作品で素晴らしかったです!
評価は「佳作」です。
干し柿 ゆきさん 10/11
日常のふとした場面から話がふくらみ、豊かな感情を表現されていて、たまらなくほのぼのと癒される作品でとても好きですね。そして、干し柿を見かけ祖母の美味しくなれと仕立てる様子や昔ながらの風景が浮かんでくるという、なんともほっこり感が心地よい作品になっています。秋という季節、センチメンタルな気持ち、干し柿、そりゃ祖母に会いたくなってしまいますね。
すでに完成形ではないでしょうか、こちらの作品。私から何だかんだ言えることはなく、いい作品だとお伝えしたいです。
「佳作」です。
まっくろねこ nさん 10/11
初めましてnさん。齋藤ともうします。何卒、よろしくお願いします。今回は感想を書かせていただきます。
黒ネコのタンゴ タンゴ タンゴ
僕の恋人は黒いネコ
黒ネコのタンゴ タンゴ タンゴ
ネコのように気まぐれよ
ラララ ラララ ララ ニャーオ
歌の「黒ネコのタンゴ」がBGMで流れてきそうな、愛らしい猫ちゃんの詩に癒されます。もしかして、こちらの黒ネコちゃんも恋人について書かれたのかな、とも想像しながら拝読しました。黒ネコちゃんは宮崎駿さんのアニメにもよく出てきて、愛されキャラですね。私の個人的は黒ネコのイメージは小さな黒豹って感じで、ハンター気質で運動神経が抜群です。
だらしない顔して、自分に対して無防備な感じがとても癒されるのでしょう。気まぐれで寄ってきて甘えてくる、マイペースな猫ちゃんの雰囲気を上手に伝えながら、自分の世界を持っている猫ちゃんのなんだか羨ましいところも後半で表現され、そのひと時が素敵でいいですね。
あなたはいつも どこかとおく
だれも知らない星に住む
あなたしか知らない星に住む
だれよりやらかく
気高くさみしい
この後半の連です。黒ネコちゃんに惹かれる表現が見事に書かれています。上手ですね。出だしのつかみ、そして全体の話の流れ、シメといい感じで読者もほっこりできる作品でした。
(私の家にも猫が三匹いて、毎日癒されていますっ!
そういえば猫ちゃんの詩って書いたことないかも……
なんだか書きたくなりましたね)
ちょっとあれっと思ったところは、寝ている猫ちゃんが三連でベットに寝転んで目を覗き込むという場面があったので、起きているんかーい、となっていますので流れとしては一連と三連を入れかえた方が、しっくりくるような気がしました。
またのnさんの作品を楽しみにお待ちしております。
ゴビの荒野 樺里ゆう さん 10/12
ご無沙汰とコメがありまして、もちろん樺里ゆうさんの常連さんと知っていますが、私の評期間では初めてのようなので、今回は感想を書かせていただきます。もし過去に違うペンネームでご投稿されていたのなら、初めましてではないのですが、その時はすみません。
規制に引っかかるワードのひらがな、置き換えて拝読させてもらいました。
おっと、ゴビ砂漠に行かれたんですね。それは凄い経験だと思います。そこで得た十九歳の「しにたい場所」を感じる感性が凄いですね。そして、そこから誰にも迷惑を掛けずにしぬというゼロの状態への願望、分かるような気がします。でも、誰にも迷惑を掛けずに死ぬというのは無理なことだと思います。存在してしまったのなら、もしその人が誰にも分からないところで死んだとしても、気にかける人物が必ずいるのですから。それは生まれた者の宿命なのでしょう。
二十一歳での気付き。これはちょっとはショックだったかもしれませんね。もしミイラになってしまったら……。「死」について語っている作品ですが、クスッと過去の自分が大真面目に思っていたことに可笑しくなるというオチが、緊迫した流れから急に緩んでそう来たか、と微笑ましい感じがしました。ちゃんと覚えていたよ、と少し大人になった自分が過去の自分に言っている場面もほっこりとして結び、このシビアな感じから急展開して読みごたえのある素晴らしい作品になっていました。
またの樺里さんの作品を楽しみにお待ちしております。
偸盗 暗沢さん 10/12
面白い内容になっている作品ですね。姿を映し出す鏡やガラスは、ぼくの顔を盗んでしまうというのだから、なんとも不思議な世界を醸し出しています。一気に拝読してしまいます。たぶん顔を盗まれた原因は映し出す鏡やガラスではなく、やはりぼく自身と社会にあるのだろうと想像しながら拝読しました。作品全体が比喩で表現されているのが凄く斬新で素晴らしいですね。ぼくらしく生きていけない鬱憤を鏡やガラスをあいつらと言い、鮮やかにそれも見事に「ぼく」を盗んでしまうのだから、と語り読者をその世界へ誘っていることに成功していると思いました。ぼくの訴えかける口調も統一されていて上手く、話の流れもいい感じで凄いっ、と頷いてしまいましたよ。お見事です。
ひとつ「年期の入った」の「年期」は「年季」かな。調べてみてください。
もちろん評価は「佳作」です。
鍋の蓋は閉めた方がいいよ まるまる さん 10/12
帰省された時の久しぶりの対面での何気ない会話で、ほっこりとしている感じがよく出ていますね。お母さんの嬉しそうな笑顔が想像できるくらい親子の会話が、うまく表現されている作品となっています。「鍋の蓋は閉めた方がいいよ」の一本ネタで括った構成もすっきりとして分かりやすく、親子の嬉しさが「何となく」(作中の言葉を引用)に伝わってきて、親子間の雰囲気がいい感じに表現された作品で素晴らしいです。
あとは少し推敲が必要かなと思います。会話の部分を統一した表記にして、繰り返しての同じ言葉は諄くなってしまいますので、その辺をブラッシングするとよいと思います。例えばで作品に触れさせてもらいした。
評価は「佳作一歩前」となります。
年末 久々の帰省
お母さんは
そばを茹でる湯を沸かしてた
鍋で
鍋の蓋は閉めた方がいいよ
何となく
私が言った
そうかしら
お母さんが応え
た
たぶん何となく
鍋に向かっていたお母さんは
くるりと振り返った
蓋をして沸かすと
お湯なんてすぐ湧いちゃうね
あんたの言った 通りだね
お母さんは言った
嬉しそうに
そうでしょう
お母さんの嬉しそうなのが
嬉しかった
時計 Liszt さん 10/13
ロータリーを眺めコーヒーブレイク。仕事の合間に心が風景へ溶け込み、時計の打ち込む時間を感じながら現実にある時間へ戻されてしまう設定がよく、いい感じで表現されていますね。
ここでユニークなのが時計塔を素知らぬ顔をして時を刻んでいくというような、時計塔を擬人化しているユニークさもさらりと書かれていまして、ここの連がまたカッコいいです!
永遠に変わらないように見える
のんびりした風景の中で
おまえだけが素知らぬ顔をして
せわしなく時を刻んでいく
周りにお構いなしに
味気なく
無情なほどに
三連の「それなのに ふと」の切り返えにひと工夫欲しいかなと思いました。このような言葉を使うのは便利なのですが、少し無理やり感がします。意味合い的には「しかし」「ところが」ってことなんですが、言葉でガツンと切り返しされた気がしたので、ナチュラルに流れたらよいでしょう。この部分、ご一考いただけるとよいかと。ロータリーの時計に気がつく様子を少し丁寧に繋ぐといいかもしれません。
最終行「さあ急いで次の客先へ行かなければ…」は、少し具体的に説明し過ぎて、過ぎてしまった時間に対して焦る雰囲気を出そうとしていると思いますが、全体の流れから見て最後に言葉が浮いている気がします。「次の客先へ…」ぐらいでいいのかもしれませんね。あと最終連の「そういえば」のこの言葉も読者は詩の流れからわかりますので、要らないかもしれませんね。散文詩で使っていた接続詞的な言葉にひと工夫してゆけば、連分けでの作品でもさらなる輝きを増すと思います。
作品の流れ、雰囲気はとてもいいですね。「佳作」です。
熱気球試乗会 Osadaさん 10/13
熱気球に乗られたのですね。高いところは苦手な私ですが、一度は乗って足をブルブル震わせながらも360°の景色を堪能したくなりましたよ。
楽しい休日でしたね。作品ももちろん「佳作」です。
自分たちが気球に乗る前の「いや!」という女の子の前ふりが、気球に乗るという凄い体験という臨場感が伝わってきますね。我が家でも似たようなことがありました。富士急ハイランドにあるジェットコースターに乗る寸前に次男が、怖いと言って辞退したことがあり、ああせっかく並んでいたのに……と。でも残りの家族で乗ったのですが、私は怖さをこえたのか笑い続けてジェットコースターを降りて来た時に次男のバツの悪そうな顔が忘れられませんね。すみません脱線でした。
Osada家はとても楽しまれたようですね。みーちゃんにとっても最高の想い出になったことでしょう。
作品はとても臨場感が出てまして、その場の雰囲気や景色、話の流れも丁寧に表現されています。読者もかなり楽しめて拝読できる作品に仕上がっています。
そうですね、俳句のところ。「」が俳句になっているんですね。個人的には「七五調で呟いている場合ではない」の一行を省いてしまうといいかな、と。俳句だよ、って頭でこちらの作品のその部分を拝読しましと、やはり話の流れがいいのに「俳句」っていう決まり文句として読み、そこで流れが持って行かれてしまい、切れてもったいないかな。
最終連では、いずれ飛び立つだろうみーちゃんの未来をも想像しつつ、今という時間の充実がとても感じられて素敵でした。ほっこりした気持ちにさせていただきありがとうございました!
。。。。。。。つぶやき。。。。。。。
MY DEARのTwitterで#毎日が辞書ダーツ詩という、テーマを辞書から選び出し作品をツイートしてもらっています。前に木村さんにも言われたのですが「テーマが難しい」と、私もそう思っているのですが、皆さんいろんな角度からテーマに沿った作品をツイートしてくださるので、楽しく拝読させてもらっています。紫陽花さん、暗沢さんも参加いただきありがとうございます。気軽に楽しまれてください。
ん〜、今週もテーマがレベチな感じですが……。みなさん、気が向いたら参加ください!
~ テーマです ~
10/16(日) #泡沫詩(うたかた。水の上に浮かぶ泡。消えやすいことのたとえ)
10/17(月) #虚誉詩(きょよ。実力に伴わない名誉)
10/18(火) #馬鹿念詩(ばかねん。物事に念の入りが過ぎる)
10/19(水) #星の国詩(そら。天)
「MY DEAR 詩の仲間たち」
https://mobile.twitter.com/mydear2000s