無常の風 江里川 丘砥
無常の風
吹き抜けるとき
時は待たない
死ぬことは
どの人にも必ず来る
遠くへ行ってしまったあなたは
どこにいるのか
この目に見えないだけなのか
そばにいた時
私たちには時間があった
いくらでもあると思っていた
幾人もの人が
今にも消えていきそうな世で
私はまだここにいる
あなたはどこかへ行ってしまった
私をおいて
見えない彼方の
彼岸へ渡る
無常の風は
どの人にも必ず吹く
いずれ私にも吹く風が
先にあなたに吹いた
いずれ誰にも来る時が
あなたには今日だった
それだけのこと
だけどそれだけのことが
とてつもない大きさで
一瞬で
全てを変えてしまう
数えきれない思い出と何気ない日常に
もうあなたはいないのだという
哀しみが
寂しさが
どこまでもどこまでも
止めどなく喪失を溢れさせて
あなたの残していった優しさや温もりを
強くして
「さようなら」まで
良いも悪いもひっくるめて
「それでも愛していた」まで
残された者を連れていく
無常の風
吹き抜けて
時は待たない
さようなら
きっとまた
会えるまで