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スレッドNo.878

張りぼての牛  荻座利守

商業ビルの
屋上に造られた
大きな張りぼての牛は

降りしきる
雨にうたれ続け
虚しいほほえみを
うかべながら
両の眼から涙を流して

造られたものが
またたく間に消え去るような
つくも神のいなくなった
この世界を
独り寂しく見おろしている

人により
造られたものどもの
朧な魂は
蒸発する今という時の
下がりゆく沸点に
追いたてられるように

巷間の雨風に流されて
永遠に忘却される過去へと
その影を薄めながら
拡散してゆく

人生という時の一部
命のひとかけらが費やされて
造られたものどもに込められた
造り手たちのあえかな魂は
触れる間もなく消えゆく
雪のひとひらのよう

つくも神の
いなくなったこの世界で
ほほえみながら涙する
張りぼての牛

その虚しい瞳は
造られたものの儚さとともに
造り手たちの命の儚さをも
見つめているかのようだった

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