摩耗 理蝶
もう飽き飽きだよね?
時代の隙間に逃げ込もうか
片親の眉間に穴を開けようか
黒い波間に溶けてしまおうか
ねぇ、どうしようかしら。
流行り歌にも
私の明日を諭されるの
誰にも何にも
私に触れないで、な夜
高嶺の花の生えるという山の
麓の村に
生まれたのよ私
あなたは待ってなさい
って言われて
生きてきたの私
言葉はね、言葉だけはね
私を救うと思ってたの
でもね、言葉はね
体からはどうしても
離れられないの
こびりついてるの
それを言った人の
香り、罪、親の影、
そんなものまでもね
全部がね
こびりついているの
あぁ、パブロフでも政府でも
何の犬でもいいから
私を冷たく飼い慣らして
私に明日を言いつけて
さもなくば私
みんなわかってるけど
言わなかったこと
みんなに触れて回るんだから
そうしてみんなの苦い顔見て
思いっきり笑ってやってから
都会の藻屑になってやるのよ
もう飽き飽きだよね?
時代の隙間に逃げ込もうか
片親の眉間に穴を開けようか
あなたの夜逃げの邪魔をしようか
ねぇ、そうしようかしら。