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スレッドNo.880

しのべるおりのうた 暗沢

 拵えるべきは 何なる面か 
 来たる祭祀を 前にして

いまや薄ぼやけた 模糊たる日差の照らす下(もと)
赤赤赤と氾濫する 二重映しの反映を
無垢に捉えるには 目がかすむ

 雲と連立ち高く失せた 青さが既に懐かしい

夥しい彩りから 歌を紡ごうと覚えたものだ
並(な)べて美(よ)き織物を 陶然と夢見たものだったが
その実紡錘(つむ)へと導く糸は 触れる指を黒く穢した

 錦繍の色彩は なにより染まる色であったか

ふる鎌の刈る垂穗の粒が 嬰児の頭に見えたのだ
末枯れる葉の細やかは 女たちの指である
路傍に敷かれる彩色は 血糊と脂膏の惨憺たるか

 死者の妬みが輝きに そう歌った詩人がいたっけ・・・・

これは如何なる気付きか 或いは錯乱?
累する折々の歌とは 他ならぬ歔欷
織り上げられた錦繍より 滴っているのは血?

 執り行うべき祭祀とはなにか
 祀る神とは なに

何なる神を迎えんや かの来たるべき祭礼に
如何なる貌で迎えらん かの祝うべき祭礼を
いや隠せ 隠せ その訝しげな相貌は その

 青褪めた相貌は 面を拵え隠さねば

ぼくは大笑いの面を作ろう 兎でもいいかもな
波立つ黒山の傍で大人しく 杵でも突いているとしよう
突いているのは餅でなく穀だが 望むなら
千々の穢れた片々も 玉(ギョク)ときらめくかも知れない
そうまでしてやっと ぼくも見出せよう

 赫々たる糜爛の赤とは異なる相を
 その光彩を

紅栄え 黄色(おうしょく)充つる
絢爛極まるその錦繍を紡ぐ営為に
ぼくも嬉々と加わろう
鼓腹撃壌(こふくげきじょう)の拍子を以て

目眩む七彩の循環は非同心円状の螺旋を描く
その華々しい脈動を感受する恍惚と喜悦を ぼくは
私は 彼等と共に高吟する

 渦中真っ只中でも外れない
 留金のような紐が面には必要だ

そうして
私はやっと参与が叶うのだ その
瞬息と悠久の間にて休む事なく
顫動を続ける 
狂宴めいた引継ぎに

や これは困った仕上がったものの 
急拵えの面ゆえか ぽっかりと
黒目があいてしまっているな
もしも穴の縁周りが濡れていたら
露のせいにでもしておこう

 筆に用いた忍ぶ草は
 豹問蝶の死床(おちばのやま)へでも捨てておこう

 いまは しのべるおりのうた

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