寂寥 エイジ
夜十時にもなると
家族は寝床につく
僕は独り部屋にこもり
その日あった嫌なこと
思い巡らし 反芻し
自分が見た現実に悩まされる
短編映画のように甦る
今日あった嫌なこと
僕も眠らなければならぬ
眠りは一種の死だと思う
そう思うと眠りたくない
でも疲れた 休まねばならぬ
そう考え始めた時
僕は哀しい時計番になり
12時も過ぎると
布団に入らなければと思うのだが
身体を横たえるのが怖い
棺桶の中の死体のようだ
布団の上にじっとして
見えない棺に閉じ込められる
眠りは仮想の死だ
ふらふらになった身体で
まるで疲れた狼のように
のそりのそりと家中を歩き回る
気分転換にベランダへ出てみた
見上げると星々が瞬く中に月が
雲間から覗いたり隠れたりしている
ああ 空はなんて神秘的なんだ
僕は漂う空気を思い切り吸い込んだ
ひと時の解放感に浸り 僕はこう呟いた
「これで何の悔いもなくしねる」