評、10/14~10/17、ご投稿分、残り。 島 秀生
最低気温がかなり下がってきたので、
夜中起きてる人は風邪ひかんように、あったかくして下さいね。
電気代、ガス代上がってるけど、暖房をケチることは難しい・・・。
●朝霧綾めさん「やさしい言葉」
良いこと言うねえー
ホントは、やさしい言葉、いやな言葉って、表面なんだよね。
相手の真意が、善意か悪意か無関心か、何を元に出てきてる言葉なのか、そこを聞き分けられることが理想だよね。
そして、相手を思う気持ちで、時にキビシイ言葉も自分が言える。また相手もそれを理解できる関係が、生まれるといいね。
順番にいくと、
まず序盤の、引き出しから手紙を出して、古いほうから新しいほうまで読み、その時代ごとの自分を思い浮かべるってとこがいいし、そこ、よく書けてると思います。
そして手紙が現在の日付のものまで来て、現実は、子供の頃思ってたように、甘くはないことを知ります。
まず、ここまでの下りが良いですね。
そして、次に、手紙と会話の違い。あんなに喧嘩してても、あんなに叱られていても、手紙ではやさしい言葉しかない違いにテーマが移っていきます。
そして手紙でキビシイことを書くという難しさに話が至ります。
後ろから2連目なんですが、
「できるだろうか」の意味が、ちょっとややこしいのです。どっちの意味かわからないんです。
①
やさしい言葉を
贈ってくる人たちには
できるだろうか
相手を想う気持ちから
たとえ厳しい言葉でも
自分の言いたいことを 言えるだろうか
②
いつか
やさしくない言葉を
贈りあえるような相手が
私にもできるだろうか
私は
相手を想う気持ちから
たとえ厳しい言葉でも
自分の言いたいことを 言えるだろうか
あるいは、このどちらでもないかもしれません。まだ第③の意味があるかも。
基本的にこの連の後半て、自分ができるだろうかの能動で書いているのに、連の前半の方は受け身で書いてあるところから、ややこしいんです。そこ、丁寧に書いた方がいいです。
引っ掛かったのはそこだけですね。ラストの2連はステキだと思います。
これ、文字の性質のことを語ってる点で、詩のテーマとしても合うんですよね。そこもプラスオンの評価として、合計で名作と致しましょう。先程指摘の後ろから3連目だけ一考しておいて下さい。
うーーむ、毎回しっかり書いてきて、グッドです。そろそろバーを上げないといけないな(評価のハードルのことです)。
●江里川 丘砥さん「無常の風」
最近、身近な人が亡くなったんですね。
死はいずれ誰にもやってくるものだと、アタマではわかっているのだけど、身近な人、大切な人が亡くなると、感情は爆発する。理性、知性では押さえられないもの、哀しみの方が勝るもの、そのような方向性から描いてくれているように思いました。
水を差すようなことを言ってゴメンだけど、そんなに近しい人でもなかったのか、具体的な思い出みたいなものが出て来ないんですよね。例えば会社の同僚の一人とかで、プライベートにまで立ち入っていない仲の人とか、あるいは友達でも10年程も会ってない人となると、そこ書くことが難しいんで仕方のないとこです。
また逆に、実際に近しい人であったならば、やはり何か、具体的な思い出のような部分が欲しかったと思います。
いい詩なんですけど、読んでて、涙が出るとこまで深まらなかったなあと思うのは、たぶんそのへんのせいかなと思いました。
初連。7連の「来る」との連係を考えてるかもしれませんけど、そこは似た言葉であればそこまで考えなくていいと思うので、初連の「来る」は → 「訪れる」にしましょう。
私、2連とてもいいなあと思った。また3連の感慨のリアル、自分のポジションを考える4連もいいと思いました。
7連から8連なんですが、7連がちょっと書いてあることを考えなきゃいけない7連なので、やっぱり4行目で切ったほうがいいと思います。7連5行目の分も8連に回して、
いずれ私にも吹く風が
先にあなたに吹いた
いずれ誰にも来る時が
あなたには今日だった
それだけのこと
それだけのことなのに
とてつもない大きさに膨らんで
一瞬で全てを変えてゆく
こんな感じの方がいいかなと思います。
9連は、6行目なんですが、ここ本当は「喪失感」なんですよね。喪失感を喪失と変えてみてるんですけど、喪失は無くなっていくことなので、溢れたり、大きくなる回りの言葉と相容れないので、ちょっとマズイと思う。
前後で盛り上げてくれているので、そこはフツウに、
止めどなく溢れて
でいいと思います。
次の10連(後ろから2連目)なんですが、すみません、ここの連、私、なに書いてるのが意味わかりません。もうちょっと噛み砕いた言い方にして下さい。
終連。ラスト2行は、
いつかまた
会える日まで
こっちの方がいいかなと思う。
すみません、あちこち触ってしまって。でもあっちもこっちも、惜しいな、と思う箇所多くて、つい。
以上、一考して頂く条件で、秀作プラスとしましょう。
いま一歩、トドメとならないのは、最初に言った具体的部分のないせいかと思います。
でも、いい詩です。むしろ亡くなった人よりも、それを受けとめるあなたの在り方のほうが読みどころとなっている詩だと思う。
身近な人の死を、どう受けとめるかの示唆がある。
●水野 耕助さん「(仮)付きの人生を生きて」
お、文筆力が上がりましたね。
文体がキレイになりました。
特に1~5連はパーフェクトですね。
思考の深さと文字表現がピタリ合ってます。
また、今回、(仮)のアイデアもおもしろかったです。
秀作を。
これでいちおう出来上がってはいるので、このままでもいいのはいいんですが、
欲をいえば、中盤ですね。
「幼い頃に」の連と「取り戻すことのできぬ」の連のところ、話がちょっとアバウトで、ぼやっとしか想像のつかないものになってるんで、あと一歩踏み込むというか、もうちょっと何か具現化したものを掴める感じに書けたらベターですね。
ラストの2連は、このままでOKですので、希望は中盤です。
でも、文筆力は上がったと思います。もしかしたら、人生を歩む力も。
●hikikoさん「アルカナ」
えーーと、hikikoさんは8月参加以来、よく投稿して下さってますが、私の担当日へは初めてみたいですね。なので、初回になるので今回は感想のみとさせて頂きます。
ごめんなさい。必要なことは詩の上で表現するか、詩の上に置きにくければ、最後に注釈をつけて頂くかして、あくまで詩の上で解決して欲しいという気持ちもあって、ツイッターの方は見てませんが、
こちらの詩は、タイトルでちゃんと「アルカナ」と置いてくれているので、タロットカードの大アルカナ22枚の話をしてるんだということは辿れました。
この詩はタロットカードへの誘い、もしくはタロットカードを楽しんでいるという詩ですね。
タロットカードは、まずもってあの独特の絵柄で、人を惹き付けるものがありますし、歴史があるものなので、いにしえからの示唆のような、歴史の重みのようなものも感じさせてくれます。思うに、どれほどの長きに渡って、人を誘惑することでしょう。ある意味、不朽の名作ですね。
作品なんですが、書く時に、まずもって自分がどのポジションから書くのか、ということは定めた方がいいですね。
これ、基本的にタロットカードの利用者サイドの立場で書かれてる詩だと思うんです。「道を教えてくれる」「心に語り掛けてくれる」は、はっきり利用者サイドの言葉ですし、全体的にそちらの立場で、ワクワクの楽しみを書かれてると思う。
でも、初行は違うと思うんです。これはタロットカード側の立場で書いてる行です。「私」はタロットカードですよね? でも後ろから2行目の「私」は、利用者である「私」です。どちらも「私」で書いてるけど、両者は別物です。こういうミスは避けないといけないです。
解決策としては、1行目はタロットカードからの声ということで「 」をつけましょう。それと、2行目と3行目というのは、「タロットカード視線」から、「自分視線」に切り替わる、「切り替わりポイント」になる行として一体の行ですから、切り離しちゃダメですね。
なので、出だしは、
「あなた達に私は導かれる」
22の表と22の裏を繋ぎ合わせて
示されるものは幸か不幸か
こんな感じの方が良いと思いますというか、「切り替わりポイント」として用を成すと思います。
参考にして下さい。
hikikoさんは、まるっきりの初めてでなく、他の担当日に結構書いてくれてる人なので、ちょっと濃い目に語りました。いろんな題材に目を向ける姿勢はいいと思います。
楽しいことを見つけることが上手な人は、人生を歩む巧者だと思います。
●秋冬さん「夫婦」
あ、私、初見で、最初の方読んだ時、1~2連でもう、その疑いを感じ、8連目の「夫は/怒鳴られても/表情は優しく」の詩行のところで、ああ、奥さん認知症なんだと確信を持ちました。こういう状態の人を見た時に、一番先に何を思うかってところが、たぶん私と秋冬さんとの世代の違いなんだと思います。
こういう症状のタイプになる人、時々いるんですよねえー 何十人に一人くらいの確率かしら? よもや、このセリフが、元はダンナさんの方が言ってたセリフだとは思いもよりませんでしたけどね。
ついては、後ろから3~4連目ですが、過去形ではなく、現在形にするのもアリかと思います。
夫は
過去に
懺悔をしているのだ
言い返せないのではなくて
すべて受け入れている
ということか
案ですが。
あと11連、「セルフレジで」は、あとの方がいいと思います。先頭だと前の連の老婆に係ってるのかなと、見えてしまうので、
あんな風には
なりたくない
と思いながら
セルフレジで
マイバッグに
黙々と詰める
私はこっちの方がいいと思いますが、判断はお任せします。
気になったのは以上ですね。
テクニックが上がってますなあー まずそこに感心。
また、私と秋冬さんは年代が少し違うわけですが、年代ごとに夫婦について考えるポジションが少しずつ違っていて、そこがおもしろいなと思って読みました。
でも奥さんも、近所の認知症の家庭に意識が及んでいるし、秋冬さんも「認知症」と聞いて、ああそうかとわかる年代ではあるわけです。これがもっと若い夫婦だと、これだけの会話ではわからないわけです。
我が事ではないけど、感心もって見ている世代と言いますか、そろそろ親の介護が始まっている人もいるであろう世代の夫婦の会話って感じがしました。おもしろいですね。
またテクもそうですが、しっかり書き切ってるとこがいいし、これ150行くらいの大作で、崩れずきちんと構成も取ってきました。名作あげましょう。