晩秋の風 荻座利守
ざわめく木の葉が
いたわりの風を送り
しずやかな陽が
落葉に降りそそぐ晩秋
やがて訪れるしじまの季へ
鎮まりゆく息の内
寂しげな地はその面に
遠い黄昏空の色を重ねて
月がその眼を細める夜には
虫の声は人知れず
揺籃歌へと羽化してゆく
草木の稔りは
色とりどりの渡し船
小さな命を
次の岸へと渡しはじめる
時が眠りに就く季節の
遠い足音が
微かに落葉を震わせて
やわらかな風が
いたわりを運び終えるまで
ほんのつかの間
優しげな歌に揺れる小舟を
仄かな安らぎが
そっと包み込んでゆく