夜景ネイルアート 朝霧綾め
夜になった
その街では
高層ビルのてっぺんや
細い鉄塔のあちこちで
ぽつりぽつりと
光が瞬く
この きれいな夜景を盗んで
小さくして私の爪に閉じこめ
ネイルアートにすることは
できないかしら
刷毛を
濃紺の夜空に浸して
たっぷりと色を吸い込ませ
それを爪に塗り
紺色の
下地をつくるのだ
今度は 光を 配置しなきゃ
鉄塔の赤い光
イルミネーションの白い光
観覧車の紫色の光
港の青い光
教会の橙色の光
そうっと
指先でつまみあげる
落とさないよう丁寧に
爪の上の夜に乗せる
色とりどりの光が瞬き
こうして
夜景ネイルアートは完成する
街中の灯りが
私の爪に
閉じこめられてしまったから
人々は困っているだろう
それでも
盗まれた夜景は
私の爪の中で
芸術作品になって
悪気なく きらきら輝いている