車窓は語る 理蝶
朝露に濡れた選挙ポスターは
嘘がばれて
冷や汗をかいているよう
神との和解を
黒地に黄色で迫る板
それはブロック塀で
静かな怒りを湛えている
赤茶けた喫茶店の軒先に
枯れた花と爛れた看板
忘れられた店先を
前衛的に覆う蔦
中身だけは入れ替わり続ける
00年代を依然背負うスーパーマーケット
それは植物人間の悲しさに似ている
セイウチのように太った老婆や
水色のランドセル背負う少女
バス停にて彼女達は手を振り
しばしの別れを告げる
景色を微かにセピア色にして
切なくさせるのは
窓に張った10年物の土埃
ヒビだらけのアスファルトと
その上をがなりながら走るバス
薄汚れたそして薄ら寒い
見慣れたもう見尽くした
その車窓に
私は人のため息の2つの意味を知るのだ