風が・・ りん
傾き始めた陽で 温度の上がった車内
エンジンをかけて窓をあける
アクセルを軽く踏む
砂利を踏み締める音とぼやけたラジオのクラッシック
かすんだ空に
粒のまま混ざり込んでいく
県道に出てスピードをあげると
全開の窓から
空気のうねり
少し長めの髪が質量をなくし自由になる
シートに全体重をかけその動きを俯瞰する
脳が緩く固まっていく温度に
すれ違う緑色のダンプ
かすかに見えた運転手の形
なぜか口角が上がった
一本道はただの帰り道
早めに終わった夕暮れの違和感
溶かされていくのは
両肺の上の薄い膜だったり
それと繋がる何かのような気もしたり
時が歪んだのではない
空間が雑に切り替わったのでもない
ただ
自分自身が最小単位に戻るような
そういう
恍惚
でもない
今ここに在ることの不確実さと
ハンドルを握るこの個体の
矛盾?
長い波長を出さないまま
街の自然光は収束していく
濃い藍色の空に
赤い発光ダイオードが光る
いつもの帰り道
家に着くのはあと5分ほど
分散しそうな粒子を繋ぎ止め
いつものように
いつものように
また1日が終わる