日の当たる場所へ 喜太郎
厚く黒い雲が覆う世界
雲に切れ目などはなく
街は暗闇の中に存在し
陽の光の恩恵は全て無くなった
緑の森林は枯れ果てて
食物連鎖は全て崩れて
生き物達の常識は覆り
人間はただ暗闇に怯えて暮らす
日の当たる場所を求め
旅立つ若者達を見送る
暗闇は若者を飲み込み
もう何度こうして見送ってきたのか
日の当たる場所を求め
暗闇の中を歩き続ける
やがて雲の切れ間から
まばゆい光が差し込む
天空より差し伸べられたその光の手は
まるで彼らを導くかの如く
まるで彼らを捕まえるかの如く
やがて空からは雨が降り注ぐ
赤く赤く 深い赤い雨が大地へと降り注ぐ
そこには生命の泉が広がり
遥か先の光へと伸ばす手のように
赤い雨の雫が跳ね上がる