月が見ている 晶子
引きちぎられ
骨を晒した恐竜の死体を
夜行性の獣たちが互いに噛みつき飛ばす血飛沫を
夢に安息を求める寝顔を
恋人達のまぐあいも
裏切りの蜜に濡れた寝室も
何をなくしていくのかも
知らないままで
空虚になっていく少女の瞳も
同じ月明かりで照らして
月が見ている
ただ見ている
潮を揺らして
私の心と血を揺らして
私の生死も揺らしている
無機的な天体
今 私が手を伸ばすのは
ただ私の中にある水がお前に引き寄せられているだけだ
私を揺らしながら
私には何も影響されない
冷たい
冷たい
届かない月に
獣のように吠えて
何がいけない
ひどく冷たい
月がきれいですね