白い枯木 荻座利守
峰々が連なる
山あいの深い谷間
どこまでも澄みきった湖の
石灰質の底に横たわる
白い枯木の魂は
何処へとゆくのか
雪のような石灰華の
白い衣をまとい
朽ちることもなく
その形を保ったまま
水の底に沈む倒木は
朽ちぬが故に
めぐる生命の輪から
弾かれて
己の魂は
誰が引き継ぐのかと
その白い衣を
愁いで染めてゆく
だが白い枯木よ
決して嘆くことはない
お前は
その美しさ故に
数多の人を惹きつけて
雪白なる枯高の姿を
見に訪れた人々の
瞳と心に
お前の魂は
確かに引き継がれて
また違う形で
広いこの世界を
めぐりゆくのだから
山間の深い谷間
どこまでも澄みきった
鏡の如き水を湛える
段丘の湖
純白に析出された魂の
旅立つところ