季節工場【冬】 秋さやか
会わないことと
会えないことの隔たりの深さで
星の瞬く夜
季節工場の大きな暖炉の前に
人々が列を成します
亡き人へ宛てた手紙を
燃やすために
訪れた人々の列は
星空の下まで続いています
ー ある朝 届いた
工場からの手紙には
まっしろな便箋だけが入っていました
郵便受けへ寄りかかり
静かに吐いた息の白さが
伝えられなかった言葉のようで
部屋に戻るやいなや
いつか街でもらった羽根ペンを握ったのです
ひとこと 書き出せば
とめどなく溢れてくる
後悔や寂しさや痛みに耐えながら
あなたへの手紙をしたためました ー
人々が暖炉の前に立ち
どこか遠い景をたたえた瞳で
そっとくべた手紙は
さまよう蛍のような
火の粉となって消えてゆきます
その束の間の暖かさに
くずおれそうになるけれど
寄るべない両手をポケットへ突っ込むと
またゆっくりと歩き出します
工場の煙突から
立ちのぼり続ける煙は
星空を覆う雲となり
時計塔の針が真夜中を告げるころ
この年 初めての雪を降らせるのです
暗闇へほのかに灯る
ひとひら
ひとひら
それは
まっしろな返信
「 ちゃんと つたわっていたよ 」
どこかの停車場
誰かの帰路
わたしの窓辺から
冷たい夜空へ手を伸ばし
そっと雪片を受けとめれば
指の先まで巡る血に
懐かしいぬくもりを
見いだすことでしょう
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いつもお世話になっております。
私事になりますが、先日、養老町第23回「家族の絆 愛の詩」で佳作入選、伊藤園新俳句大賞で佳作特別賞を頂くことができました。
これもMY DEARの評者の皆様のご指導のお陰です。
詩と俳句は使う思考回路が違うようで切り替えに戸惑うのですが、繋がっている部分もあっておもしろいです。
これからもご指導頂き、自分で納得いく詩が書けるよう精進したいと思います。
試作ペースが遅いのですが、今後とも宜しくお願いいたします。
季節工場、秋冬は作れたので、春夏も作れたら良いなと思っておりますが、それは冬が終わるころ考えたいと思います。。