橋の灯の繋がつてゐる今日の月
お泊りに来た三年生が「月見がしたい」と珍しく可愛いことを言うので、お吟さんが采配を振るった、連れ合いに任せていては、月が天心に昇ってしまう。パスタの予定を変えて、米を仕掛けて早炊きのボタンを押す。汗と砂埃まみれの二人を風呂に入れ、ドロドロの制服を洗濯機で回す。このあたりは学生服縫製の町で、小学生も制服なのですぐ洗わなければならない。
月見団子の代わりに羊羹を切って爪楊枝をさす。おお、初物の青みかんもある。玉子焼きをつくる。麦茶を入れる。半紙を五枚ならべて、養殖している人からもらった全型の焼き海苔を五枚乗せて、炊きあがったご飯を乗せる。おかかと梅干しを乗せて、またご飯を乗せ、海苔を畳んで半紙で包めば、あっという間に山賊むすびの出来上がり。敷き物がないので、一坪ほどもある大風呂敷を持って行くことも忘れない。
いつもすっぴんでもんぺのお吟さんは、男より支度が早い。「月見がしたい」と聞いて、一時間後には弁当持って風呂上がりのこどもを連れて鷲羽山の展望台に居る。一年生は山道が怖いと固まって泣きそうであったが、展望台へ着くとよその子もちらほら遊んでいて、おなかが空きすぎて山賊むすびに齧りつく頃には笑顔も出てきた。木星だろうか、大きな星も東から昇ってきて、大風呂敷に寝っころがって飽くこともなく遊んでいた。
照らされて月の寝床のひやひやと 石井みや
