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スレッドNo.1583

家族なる信仰はあり水仙花

20年間探していた亀田虎童子の第一句集『亀田虎童子句集』(昭和55年、八幡船社)が「日本の古本屋」を検索していたら出ていたので4710円と定価は1000円だったが、古稀を過ぎると見つけた時に買わないと生きてるうちに手に入らないので早速注文した。これであと『百里』が手に入れば全句集は読めることになる。「怖いひとみんな死んでる年忘れ」といった句を詠んでいたから師の瀧春一も仲間の八田木枯も鬼籍に入っている。この句を読んで笑ったのは当時俳壇に睨みを利かせていた藤田湘子など立て続けに重鎮が亡くなっていたからでこんな面白うてやがて悲しき忘年会の句があるのかと感じ入ったからだ。「ひとところ虫唾の走る虫図鑑」とか「この蜂でなけれど蜂に恨みあり」とか油蝉は頑丈な声で鳴くなあとか朝まで待てないのか夜の蝉はとか枇杷の種はこんなに大きい必要があるのかとかといった感慨を俳句にしたら本当に可笑しくて、句仲間の雪我狂流も面白い俳句を詠むが、現俳壇では亀田虎童子が嚆矢だろう。

  売り言葉受けてたつべくマスクとる 亀田虎童子

冬でなくともヘルパーは公衆衛生上マスクをつけているが、コロナのせいで年中マスクをしている御時勢ではマスクに季感は薄れているとはいえ、やはり亀田虎童子には別格の面白さがある。京極杞陽の「美しき人美しくマスクとる」「居眠れる乙女マスクに安んじて」「マスクして彼の目いつも笑へる目」の高貴の目とは別の無頼の徒のような詠みっぷりでどちらも大好きである。そういえば京極杞陽は今のわたくしの年で立冬の日に亡くなっている。どんどんえらいひとを年だけは越えてゆくねえ。

『亀田虎童子句集』は二十代から三十代にかけての第一句集だから脂の乗り切った『両端』のような洒脱さは薄いが、それでも

  むづかしき顔をしてをり鯰釣
  病名は仮病といへり花曇

には吹き出してしまった。さあ、亀田虎童子御存命のうちに『百里』探そう。好きな俳人の句集は全集ではなく手に取ってその時の時間を共有できる単行本に限るのである。会える機会もあったが、やはりかっこいい無頼の俳人として思い続ける方がわたくしにはあっている。

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