日脚伸ぶ犬も喰はへん「夜の梅」
>星冴ゆる夜の梅てふ羊羹も お吟
虎屋の羊羹は父が東京出張の折にお土産で買って来てほんのりとした甘さがおいしくてはんなりとした味とはこのことかと京都の妻の家へ挨拶に顔を出す時に銀座の虎屋で買って持参したら「虎屋の羊羹は京都では犬も喰わへん」と言われて驚いた。妻の家は先祖代々京都を出たことがなく天皇陛下を「天子様」と呼ぶ家柄で千利休三千家の武者小路千家ゆかりの直系とかで道理で結婚式に茶坊主のような老人が出席して酩酊していたわけだと随分経ってから妻がお茶の免許皆伝の木札を持っていたので何それと聞いてわかったほどわたくしは家柄といったルーツには全く興味を持たない野暮筋で、東男と京女と言われるには江戸ではなく常陸の国の出という粋筋とは縁もゆかりもない馬車馬のような男だったから妻もわたくしに一度も茶を立てたことがなかったほどで、なぜ虎屋を嫌うのかというと、天子様が京都から東京に御所を移された時に「天子様は京にいつか戻って来やはる」とあきんど達は皆京にとどまったのに虎屋はのこのこ付いていった裏切り者で、そう言えば京都の御所のそばに虎屋があるので京都見物に学生時代友人と来た時に立ち寄りお汁粉を頼んだことがあったが関東のお汁粉とは全く違うはんなりとした小さな丸餅のどろりとした小倉汁粉で豆の甘さだけの上品な味だったので感心したが、店内は閑散としてお上りさんのわたくしたちだけだったことを思い出した。ただお茶を立てなかったのは妻はお茶ではなくお茶菓子目当てで免許皆伝になったので鎌倉の鳩サブレーで名高い豊島屋に行くたびに「お万買うてえな」とねだっていたから根っからの食いしん坊でお茶の席の婆あどもにいじめられていたのでお茶が嫌いになったそうで、素性がばれていじめた婆あどもが一斉に三つ指付いて今までの御無礼をわびた時にうんざりしてお茶はやめたそうで、家柄から逃げるために埃を猛然と立てながら馬車馬のように仕事に邁進している東男に惹かれたらしい。門から玄関まで車で行くような豪邸の財閥の息子と見合いさせられて籠の鳥になりそうで逃げ出したというのだから向こうの母親はどんな男なのかと待ち構えていたら、そいつがおめおめと犬も喰わへん裏切り者の虎屋の羊羹「夜の梅」を手土産に差し出したのだから寝込むのも無理はない。妻が頑張ったので母親も折れて結婚を許した途端、気が緩んだのか今度は妻が寝込んでしまい、夜自宅に帰ると母親から電話があり娘が入院していることを知らせて来たので、そうですかと入院先を聞いて、土曜日だったので明日は休みかと、新しく買ったオートバイのギアを長距離用のギアに取り換えて朝までには着くだろうと慣らし運転には500キロはちょうどいい距離だと戸塚から京都まで七時間ほど東名高速を飛ばした。父親は温厚な人だったが仕事一筋の人だったからわたくしの一途さを言わずともわかっていてわたくしが来るかも知れないと母親に言って翌朝病院に電話して来るかもしれないから身だしなみを整えておきなさいと言っていた時にわたくしが到着して、ベッドにいないので探したら寝間着姿で電話に出ているので肩をたたいたら「もう来てはる」と言ったので両親も驚いて慌てて駆けつけて来たが、「元気なので安心したので、明日も仕事なので帰ります」とバイクに乗るわたくしを引き留めて朝食だけでもと食事をしてからまた高速を飛ばして帰宅したが、この一件で母親も心を開いて娘を先祖代々の京都から東下りを許したいきさつがあったことを「夜の梅」で思い出した。
話は音を立ててがらがらと変わるが、「ににん」の新年会の席がふらんす堂の山岡喜美子代表と編集長の山岡有以子(ふらんす堂ブログ日記ではP子さん)と一緒だったので、顔見知りなので話をしていて、わたくしが澤好摩の飲み友達だと知って「あら、今うちで澤好摩全句集を作っている」と聞いて、そう言えばアンソロジーの『澤好摩句集』(ふらんす堂、現代俳句文庫64)はフランス堂だったのであれは誤字が多いので今度はしっかり校正してよとお願いした。第一句集『最後の走者』の
風倒木そのまま禁猟句の森は雪
の「禁猟句」はねえだろう。澤さんにこれ禁猟区のジョー句かと聞いたら誤字だと憮然としていたが、出版社も「円錐」の連中も気づかないとはこいつら澤さんの句への敬愛が足りないとふらんす堂には満腔の不満を申し上げたが、気合を入れて校正しますと言っていたが、腰帯の
港湾の色なき風に象の芸
も旧字で正しくは湾は旧字では
港灣の色なき風に象の藝
だが、これは澤さんも見逃していたからふらんす堂だけの責任ではないが、校正するものは精通していただきたい。
編集は「円錐」編集員の山田耕司さんなので間違いはないだろうが、わたくしには酒が入るとぶー垂れていたので澤好摩百句を山岡代表が山田耕司さんに頼んでいるというのは見ものである。「鬣」の深代響の澤好摩百句選、高山れおなの澤好摩百句選評に山田耕司の百句選評が加わるのは澤好摩ファンとしてはとても嬉しい。わたくしの飲み友としての感賞が懐かしく思えるからだろう。本当にわたくしは澤好摩が大好きだった。澤さんも猫髭が大好きだった。そういう飲み友だったことで以て瞑すべし。
あ、りんさん、飛び越していた。
.>ランチは里芋と菜の花の白味噌のお汁と、祝蕾という高菜の子のオムレツなど。茶花は大王松というとても長い松葉と葉牡丹。掛軸の代わりは、美魔女さんへの俳画<一陽来復根のもので養生す>。炉のなかの備長炭も美魔女さんの和服姿も美しく。
いいなあ、りんさんもお吟さんの句会を楽しみにしてください。
実はわたくしも月一回吟行頭取をやることになるかも知れないので(俳句弟子のをさみとの吟行句会とは別に)参考にさせていただきます。
あ、ラスカルも飛び越していた。おめえら早起きだなあ。
わたくしは滅多に人に会わないので日曜の「ににん」の懇談会の疲れが溜まったのか、昨日はなくした銀行のキャッシュカードが出て来たので警察やら銀行やら回って、ついでに証明書用のマイナンバーカードを落として探しまくって見つけたので(これは出がけに部屋で落とした)、疲れが重なって、晩飯食わずに朝まで寝てました。
