身をあげて尻尾をもらふ五日かな
浅草橋にある佃煮屋の海老の佃煮は絶品で、頭から食べるか尻尾から食べるかで銀座のバーの母娘が言い争っていたが、確かにそれだけの逸品だった。たい焼きを頭から食うか尻尾から食うかといった話や鎌倉の鳩サブレ―でも同じような話があったが、他愛もない自分の好きに食えばいいだけの話だ。しかし、コロッケは小判型がいいか俵型がいいかという話になると話が違い、俵型のコロッケというのはカニコロッケのことなのでわたくしは中身がどろどろしていて気味が悪くほっこりしたジャガイモでないとコロッケとは言えないと断固として会社員時代は同僚と譲らなかった。カニクリームフライとでも名前を変えればいいのであんなものコロッケではない。それからずいぶん経って阿佐ヶ谷駅裏の横町の定食屋で「限定コロッケ」というのが張られていたので頼んでみたら、これが俵型だったので失敗したと思ったが、なんと中身はほくほくジャガイモで、唸るほどうまかった。中身がカニクリームでない俵型コロッケというのもあるのだ。小判型のカニクリームコロッケというのは絶対ないと思うので、見かけはどうあれ中身がほくほくジャガイモであればコロッケはいいのである。
話が海老天からそれたが、わたくしは鎌倉の天ぷら屋には独身の頃から行きつけがあって、ここの海老天は尻尾が平らではなく切込みが入っている。生き海老なので尻尾を切って水分を出さないと油に撥ねるからで、天ぷらもフライも海老は尻尾を見れば冷凍品か生き海老かすぐわかる。子どもは尻尾を食べずに残すのでわたくしは身を娘たちにあげて娘たちから尻尾をもらい熱燗の肴にする。主も知っているのでわたくしには頭も素揚げにして供してくれた。袴揚げとか言っていたような。
