美術展刺繍よろしき羽織着て
戦後つくられた羽織は、丈が短い。質素倹約の物のない時代なのでしょうがない。そのころ買った羽尺を一反、長羽織に仕立ててほしいと持って見える方があった。裾の折り返しをうんと少なくすれば出来ないこともないので、なんとか仕上げた。
それにしても、この背中の刺繍は健気だ。職人さんが一針一針丁寧に手作業で刺繍を玉結びしていく作業が「縁を結ぶ」ともいわれる、縁起のよい相良刺繍である。他の刺繍のものと比べ糸が引っ掛かりにくいためどの刺繍よりも丈夫と言われている。人が早死にしていた時代だから、縁起を担ぐ紋様がこれでもかと刺されている。右下から、菊水・青海波・遠山・網干・老松。左上へ、菊水・竹・七宝・遠山・老松・デフォルメされた宝船には立浪まで(笑)。
漁火の灯る夜長は沖にあり 池内たけし
