クリスマス丸鶏こぞより高くなり
馬の仔に母馬が目で力借す 木附沢麦青
辞書では「力借す」も「力貸す」もどちらも使われているので(『新明解国語辞典』)間違いではありません。ただ、パソコンでは「かす」で引くと「貸す」しか出て来ないし、「かりる」で引くと「借りる」しか出て来ませんので、かすのは賃貸、借りるは借金、というのが現代の世相なのでしょう。この句は第二句集『南部牛追唄』の句ですが、東奥日報社『木附沢麦青句集』からの引用では、「馬の仔に母馬が目で力貸す」となっているので、これはタイポでしょう。
立春の山が山押す陸奥の国
山の影山にしたがひ冬に入る
といった大野林火直伝の掴み方は「力借す」の母馬が仔馬へ情を寄せる直接さを表わしているように思われます。白川静の『字統』では「貸」は「施すなり」「予ふるなり」とあって「施与の義なり」としているので字統的にはふさわしいと思いますが、力を一方的にもらっている、見守られている姿は、平衡障害を患っているわたくしには「力借す」の生命力の素朴さを感じます。
