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スレッドNo.440

燈明(みあかし)の奉りたる冬紅葉

弟子の「をさみ」さんに誘われて今宵は「白頭」と号して今川家の菩提寺観泉寺の竿燈会に出かけた。冬紅葉をライトアップして近隣の住民に子どもたちの生花と琴の演奏とともに楽しんでもらおうという企画で家族連れで境内の塀に沿って18:00から20:30まで開門する慣わしで、わたくしたちは17:30に着いたが、もう長蛇の列で、開門して二順目の待ちだった。人工的にライトアップした催しは好きではないが、吟行をしたことがない弟子にどういうものかを知ってもらうために同行したが、寺側からの企画ではなく近隣住民の有志が企画した親睦会のようなもので、句会議員も協力してライトアップの電気代を区の負担とする協力をとりつけただけで寺側は一銭のお布施もとらなかったので金持ち寺ということになる。ために二千人も観客が来るので、入れないお客も出るほどの人気の賑わいだから、お客も知ったもので三々五々で集まるので今夜は全員が紅葉や生花や琴の演奏を楽しめたようだ。

驚いたのは小学生たちの一年生から参加している生花で、池坊の指導らしいが、子どもたちの作品が小学生とは思えないほどの達者さで、「皆伝」も見かけるので指導者も出展していると思っていたが全員小学生で、しかも名前が物々しいので号のようなものかと思ったら全員本名だそうで仰天した。多分、池坊の親たちが子どもに付けた名前だと思うが、こんな侍のような名前では将来苦労するなあと親の欲目で付けられた子どもたちが名前負けしないことを願うばかりだ。

一巡したら出ていかないと閊えるので俳句を詠んでいる閑はあまりなかったが、出ると塀沿いに角を曲ってもまだ続いていたので最後尾のプラカードを掲げた係までは百メートルはあったと思う。お祭の俳句は始まる前とか終りを詠んだほうが月並にならないよと教えて、最後尾のプラカードの若い男の係が寒いせいか背中のジャンパーにプラカードを挿して両手をジャンパーに入れていたので、こういうのを詠むと面白いよと言ったが、どう詠んだらいいかわかんないから手本を見せろと、弟子のくせに年は後期高齢者でわたくしより上なので師匠を指図するところがあるが、まあ、しょうがないと、

  最後尾の札を背に挿し懐手 白頭

と詠んだ。どれが季語?懐手だ、懐手が冬の季語なの?本来は和服の手を袖から出さずに懐に入れて暖をとることを言うが、まあジャンパーでもいいだろう、と師匠もアバウト。

亡くなった御主人を偲ぶ俳句を詠みたいというのが彼女の本意なので、じゃあ近所の「サイゼリア」で安上がりに行こうと寄ったら階段まで家族連れのお客が順番待ちで、こりゃあ無理だと、家庭料理の「さつき」に電話したら空けとくと予約が取れたので足を運んだ。彼女は生前の御主人と常連だがわたくしは二度目だが風体がお吟仕立てだったので強烈な印象を店も客も受けたらしく「俳句の先生」と覚えていて、「柿色の形見の服や冬隣」でもらった柿色のウィンドブレーカーを着ていったのでをさみさんが、これ主人の着ていた服といったので店のママも覚えていた。詠んできた俳句を添削しろと催促するので、一句目は、

  春たけなわ 友の見舞に Vサイン をさみ

真冬に「春闌」ってなによ。主人を見舞いに来た友達にVサインをした時を思い出したのであれは春だったと歳時記見たら「春たけなわ」が気に入ってこれ使いたいと思って。だとしても友だちが見舞いにわざわざ来るんだから重篤な状況で気丈にVサインで答えているわけだが「春たけなわ」は「春深し」の傍題だから知らない人は末期ではなくてもう快復間際の春風邪とか足をくじいたといった春爛漫で浮き浮きしている情景を想像してしまう。だったら、今日のような朝晩は寒いけどまるで春の陽気のような十一月の季語「小春」の方がいいと思うよ。「玉の如き小春日和を授かりし 松本たかし」という「授かる」という思いがこの季語にはある。小春日とか小六月とか立冬を過ぎても春のように日中は晴れて暖かい日の方がいいのではと言うと、先生に貰った山本健吉の『季寄せ』には載っていなかったと言う。そんな馬鹿なと見たら確かに載っていない。載っていないのは当たり前だ。これは春では無く冬の季語だから「秋・冬」を見ないと駄目だっぺよ。実に困った弟子である。

  小春日や友の見舞にVサイン

なら、本当は厳しいが、友が春を運んできたようにも季語が支えてくれるからと言うとをさみさんも納得してくれた。

まあ、こういう凸凹師弟だが、俳句を詠むことで主人との思い出が形になって主人の兄やお母さんが共鳴してくれるのが嬉しくて、こういう形で受け入れてゆくと自分も新しい気持で生きていけると、週二回の養老施設の掃除と食事の用意を朝の七時半から夕方の四時半まで勤めて、明日からマンドリンを習いに行くと言っていたので「ふさぎこんではいけない。仕事をすることです」というチェーホフが妻オーリャに言った手紙を思い出した。

引用して返信編集・削除(編集済: 2022年11月20日 03:49)

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