人日や永瀬清子の詩を愛でて
>雪のパブ永瀬清子の詩集など
以前も書きましたが、永瀬清子はわたくしが若い頃から彼女の全詩集、全短章集を集めて座右に置いていた詩人で、岡山というとわたくしは彼女を真っ先に思い出します。「亡き句友が惚れていたママがいるパブ」には永瀬清子の詩集が飾られていたのでしょう。『あけがたにくる人よ』『春になればうぐいすと同じに』は詩に疎いひとたちにもわかる詩集なので『短章集』とともに岡山の喫茶店やパブにはそれとなく置いてあるといいですね。それにしても良き旅をされたようで、「水鳥の川がつらぬく峡の町」に始まる旅吟もいいですねえ。美智子様は彼女の「あけがたにくる人よ」を愛して英訳と朗読もしたので、それを聞いた永瀬清子が「まだ私の詩をよしとする人がいた」とこの詩をタイトルとした詩集『あけがたにくる人よ』を編んだものです。『降りつむ 皇后陛下美智子さまの英訳とご朗読』も彼女の詩「降りつむ」をタイトルにしたものです。敗戦後昭和22年から23年にかけて詠まれた詩を集めた『美しい国』に収められています。以前、このあとに出た詩集『焔について』から「だまして下さい言葉やさしく」を紹介した記憶があるので、今回は「降りつむ」を紹介しましょう。
降りつむ 永瀬清子
かなしみの国に雪が降りつむ
かなしみを糧として生きよと雪が降りつむ
失いつくしたものの上に雪が降りつむ
その山河の上に
そのうすきシャツの上に
そのみなし子のみだれたる頭髪の上に
四方の潮騒いよよ高く雪が降りつむ。
夜も昼もなく
長いかなしみの音楽のごとく
哭きさけびの心を鎮めよと雪が降りつむ
ひよどりや狐の巣にこもるごとく
かなしみにこもれと
地に強い草の葉の冬を越すごとく
冬を越せよと
その下からやがてよき春の立ちあがれと雪が降りつむ
無限にふかい空からしずかにしずかに
非情のやさしさをもって雪が降りつむ
かなしみの国に雪が降りつむ。
