振返って・・・こんな投稿もしたのだなあ
✱美意識ある殺陣✱ #2019.4.12
明後日14日で熊本地震から3年になります。地震で崩れて見るも無残な姿になった 熊本城がベールを脱ぎ、青空のもと綺麗にお化粧をした姿を見せました。そびえ立つ天守閣は熊本の人達に勇気を与えることでしょう。
私は東映時代劇と映画館でのお付き合いは1958年から1963年の半ば迄で、高校進学のためにいそがしくなってきて映画館には行かなくなりました。それが、丁度時代劇が傾きだしたころでした。その5年間に心に刻まれた、良き時代の時代劇が今日まで心に生き続けているとは、なんと素晴らしいことでしょう。
ついつい・・つられて・・私にも殺陣のことをすこし話させてください。
時代劇は、何といってもチャンバラ時代劇。素晴らしいと息を呑み身震いし引き込まれていきます。殺陣は、それぞれの俳優の持ち味を出すものですから、殺陣師さんも大変だったでしょう。
殺陣が上手かった俳優はというと、中村錦之助さんと近衛十四郎さんは必ず名が上がってきます。
錦之助さんの動きには歌舞伎的要素が入っているように思えます。町人、殿様、浪人、武士と役柄でガラリと変えてくる上手さには感服します。「宮本武蔵」「関の弥太っぺ」「伊達政宗」とそれぞれに見せてくる殺陣はなるほど、時代劇ファンを引きこむだけの魅力があると思います。殺陣は上手く立廻りには凄みと重みはありますが「源氏九郎颯爽記」でのように着流しでの立廻りときの裾さばきがどうも。
近衛さんは錦之助さんのような殺陣ではなく、構えて余計な動きは入れずに一太刀で斬っていくという感じがいいのでしょう。ただ、「主水之介三番勝負」で橋蔵さまと対決をしますが、あそこは映画とは言え近衛さんの迫力に圧倒されてしまいます。
大友柳太朗さんは身体も大きいですから、力強さがあり動きも大きい、やっぱり丹下左膳での殺陣が印象的です。ただ、リハーサル通りの動きをしないときもありますから、剣会の人達や追いかけるカメラは大変だったかもしれませんね。
ということで、他の俳優さんの殺陣と比べても、私的にはやっぱり橋蔵さまの殺陣に魅かれることは言うまでもありません。
舞踊的動きを入れた曲線的な流麗な動きで、他の俳優と違い立廻りのときに頭がぶれないのは、舞踊で鍛えた腰の強さが備わっていたからでしょう。ですから、回転しながら相手を斬ったり、体を反らしながら斬っていく、豪快さはないが身のこなしに優雅と華やかさがあり、そこに、スピード感があったから、そこが橋蔵さまの殺陣の魅力倍増でした。
この動きの合間に、橋蔵さま得意の目を流し見栄をきるのですから、女性ファンが見惚れるのも当たり前でしたね。
橋蔵さまは着流しでの殺陣が多い方です。着流しのときの着付は、激しく動いても崩れないようにしますが、橋蔵さまの場合、動いた後、着物の裾がちゃんと元通りになるように足元にも気をくばっての動きをしますから、裾さばきが綺麗です。ですから、立廻りでもカットは少なく通しでやっているであのスピード感が出たのではないでしょうか。
「若さま侍」「新吾」「草間の半次郎」を始め、クライマックスの立廻りはスピードある長帳場が多いです。やはり初めの頃は重みを感じず、動きが綺麗というところに目にいきます。それでも、「新吾十番勝負第二部」の多門先生を助けに行くのに廊下を走りながらの立廻りは素晴らしいものを感じます。その橋蔵さまの殺陣、構えが違ってきたのは「月形半平太」の時期頃からではないでしょうか。キレと力強さが出てきました。
しかし、先日も書きましたが、リアル路線に時代劇が変わってくると、集団抗争時代劇が多くなってきましたから。作品内容自体が、汚いものになってきてしまう。こうなると、殺陣の美しさは必要でなくなってしまいました。東映は一方では美しさを見せていくべき、それとも汚れたものでいくべきか、迷いがあったろうと思います。
橋蔵さまの作品にしても悩んだでしょう。橋蔵さまの場合は、「月形半平太」やテレビでの「荒木又右衛門 決闘鍵屋の辻」「鯉名の銀平雪の渡り鳥」に見るように、綺麗なチャンバラの殺陣の中にちゃんと壮絶さが出てきていると思うのです。美意識ある時代劇で、美意識を持つ殺陣でも、凄惨さは作れるのだと思いました。