振返って・・・こんな投稿もしたのだなあ
✱ 心にある雪之丞、闇太郎✱ #投稿日2017.1.12
「雪之丞変化」の話が出てくると、ファンとして私も話したいことが沢山出てきてしまうので、困っちゃいます。これも橋蔵さまファンだったら何回も見たくなる、大切にしたい作品の一つですね。
東映でも橋蔵さが東映入りしてすぐに「雪之丞」をやりたかったようです。しかし、1954年に千代之介さんが「雪之丞」を三部作をやったばかりなので出来なかったようです。
「雪之丞変化」の映画を作ると二部~三部作で各社作って来たのですが、長すぎで間延びしてしまい、この一作だけにするのには脚本が大変だったようです。
正に橋蔵さまのために作られた内容がぎっしりにつまった作品になっています。
ただ、撮影はしたが、途中でシナリオを書き替え撮り直しか、または何パターンかを撮りしぼったのではないかと私は思うのです。
通常の物語のように浪路は雪之丞に恋焦がれて屋敷をでて病で、闇太郎の小屋で雪之丞に抱かれて死ぬのです。闇太郎が浪路を屋敷に運び、雪之丞が三斎の前に現れ、父母の恨みを、その背後には白刃が、ということになり雪之丞の殺陣があるはずだったのだと思うのです。ビデオのパッケージを見た時、不思議に思うでしよう。雪之丞の殺陣が写真にあるでしょう。
しかし、演出は作品のようになりました。この作品は、雪之丞と浪路を通しての市民の米騒動とそれに加担する闇太郎の方に重きをおいているような。雪之丞も闇太郎も大変素晴らしいのですが、私の頭の中に残るのは闇太郎です。この作品での評価はやはり闇太郎が素晴らしかったと言われました。
三役をやるわけですが、長谷川一夫さんの時は母親を、橋蔵さまは父親でした。橋蔵さま父親役で処刑場面に意欲的に取り組んだようです。
この時、橋蔵さま右足首を痛めていて包帯をしていました。足を引きずって入って来るほどで、何日か休まなければいけなかったのですが、迷惑をかけてはと頑張ったのです。前日、闇太郎であまり活躍してころんでしまったということでした。
口上「君が情けのたまずさに、・・ご贔屓願い奉る」からの『宮島のだんまり』、『関の扉』のお姫様姿』
最後の『鷺娘』(もう少し長く見たかった)と橋蔵さまの歌舞伎時代を彷彿とさせます。これだけの演目を熟せるのは流石です。(ご本人は着せ替え人形のようだったと)
淡島千景さんとは初顔合わせでしたが、お二人の息がとても合っていたのがより素晴らしい作品にしていますね。この時、淡島さん病み上がりで出演不可能という話がでましたが、よかったです。淡島さんのお初だから、橋蔵さまの雪之丞と闇太郎もよくなっています。
雪之丞の舞台を観ての闇太郎とお初の言葉の掛合いがよいです。(ここ覚えちゃいました)
「あばたがえくぼに・・」「違うよ・・惚れたのは目だよ」「・・まっ、目に惚れて肘鉄食って痛い目にあいなさんなよ」「・・あたしゃもう、雪之丞に目がないんだから」・・橋蔵さんの雪之丞だから、この掛け合い言葉ができるのです。
「雪さんの行先を教えよう」「船は・・」「あいた、慌てさせるねえ」「今夜の雪さんはお前にまかすぜ」「うれしいねえ」「俺の名を・・ひっぱりだすんだよ」・・この時も闇太郎とお初の色気ある目での会話となっています。(初共演とは思えないお二人の目の使い方と雰囲気)
そしてもう一か所、雪之丞とお初の「売りまへん」「売りまひょ」「あーら、気に入ったね、江戸っ子は気が短いの」
大川端は絶対に外すことが出来ない場面。
お初の話を聞きながら雪之丞が歩くところ。左右の指でさりげなく着物の褄を持ち変えながらの砕けた歩き方。
「ねえ、雪さん諦めな・・」とお初が言う時の褄を持っている手の動き。
「ご親切なご贔屓様の・・察しておくれやす」のところの歩き方と妻を持つしぐさ。
雪之丞、お初、ムク犬の吉、三人の素早い動きから、さっと舟に乗りながら簪を髪から取り投げるところまでの素晴らしさ。
そしてさっと翻って「すえなごうご贔屓に」と粋に舟を漕いで行く後ろ姿は美しい。
お初の家に寄った時に捕り方に囲まれた闇太郎の六尺棒での立回りも見逃せないところだと思います。