振返って・・・こんな投稿もしたのだなあ
✱第一回東映歌舞伎から・・(3)✱ #投稿日2017.3.12
先日は、第一回東映歌舞伎の初日の楽屋裏の様子と記者の見た感想を載せました。
今回は、何日か過ぎた頃、大友柳太朗さん、東千代之介さん、そして橋蔵さまの三人が、舞台の合間に雑誌が設けたおしゃべりコーナーから抜粋、要約して載せて見ました。
ご存知でない方のために書きましたので、ちょっと長くなりますが三人のおしゃべりにお付き合いください。(お茶でも飲みながら・・ネ )
ここから、皆様は何かを感じとれるかしら、感じとれたらうれしいなぁ。
🎤「仲良しトリオ座談会」から
“魅力いっぱい愉しき舞台”三人のたわいないおしゃべりを少し、掻い摘んで載せてみました。
*大友・・・・ こう忙しいと、暑さなんて感じている暇なんかないみたいだ。
*橋蔵・・・・ まったくそのとおり。比較的夏負けしない方だけど、去年あたりは少しバテ気味でした からネ。
*大友・・・・ 君なんか体重が軽い方だから、それほど夏は苦しくないかもしれない。僕はこのボリュームだろう。毎年、いかにして夏を涼しく過ごそうか知恵を絞るのだが、今年は東映歌舞伎で冷汗三斗。涼風いっぱいというところだよ。(笑)
*千代之介・・これ全身冷房完備というわけですネ。(笑)
------ ----- -----
*橋蔵・・・・しかし楽しいですねエ。
*大友・・・・全く仰せの通り。(笑)
*千代之介・・初めての学芸会の頃を思い出しましたよ。
*大友・・・・この道じゃ、随分長くメシを喰ってきて、心臓の方も大分強くなっているつもりだが、初日は何となく体が震えてきたからネ。
*橋蔵・・・・先輩のボリュームで震えがきたんじゃ、舞台装置が随分揺れていたことでしょうねエ。(笑)
*大友・・・・そういう君だって、幕が開くまで、てんで落ち着かなかったじゃないか。
*橋蔵・・・・アレエ、バレたか。(笑)
*千代之介・・僕なんていまだに出が近くなるとソワソワしちゃって。
*大友・・・・だからトイレが近いのかナ。
*千代之介・・まさか、それほどじゃありませんけれどネ。しかし、それに遠からずってところですかナ。(笑)
------ ------- ------
*大友・・・・舞台っていうのはいいねエ。
*橋蔵・・・・映画とはまた違ったよさがありますからネ。
*千代之介・・ツーていえばカーとくる。
*橋蔵・・・・そうそう、それそれ。(笑)
*大友・・・・泣いても笑っても、そのまま観客の反応がこっちに響いてくる。たまらないねエこの感じ。(笑)
*橋蔵・・・・映画に入ってからは、一本の作品がブツ切りでしょ。後になってフィルムを見て、ああそうそう、あそこはこうだっけと思うけれど、舞台の場合は、最初から最後まで一本で通せますからネ。
*千代之介・・ウン、それが魅力ですよ。映画の場合は、クランク一日目にラストの斬り殺されるところを撮ったかと思うと、翌日はファーストシーンのラブシーンを撮影したり、まきに神業の連続ですからね。その点舞台じゃ死んでしまえばそれっきり。ちゃんと順序通りことが運ばれるからいい勉強になりますよ。
------ ------- -------
*千代之介・・先輩の丹下は実に豪快ですねエ。あの殺陣の素晴らしさは、大向こうから掛け声の一つもかけてみたくなりますよ。
*橋蔵・・・・貫禄十分。実にけっこうな丹下でした。
*大友・・・・素直にお受けしましょう。
*千代之介・・先輩は新国劇のご出身でしたネ。
*大友・・・・ウン、僕はもともと大の辰巳先生のファンだったんでネ。芸名の柳太朗は辰巳先生からいただいたんだよ。
*橋蔵・・・・辰巳先生の丹下も迫力があって素晴らしいと思いましたよ。
*大友・・・・殺陣が素晴らしい。男性美の極みっていうんだろうネ。先生が動くと、どんな広い舞台でもとても狭くかんじるから不思議だね。
*千代之介・・芸の偉大さなんでしょうね。
*大友・・・・そうなんだろうな。橋蔵君なんかも、こうやってみると、一見スマートで華奢に見えるだろ。でも舞台じゃ、なかなかのボリュームだからね。やっぱり舞台で鍛え上げた人間は、そういったところに違いがあるんだろうね。
----- ------ ------
*千代之介・・橋蔵さんも出ずっぱりの三本じゃ、大変ですね。
*橋蔵・・・・女形と違って身が軽いから、その点は助かりますよ。
*大友・・・・女形ってのは、夏はシンドイだろうね。
*橋蔵・・・・エエ、今から考えると、よくまあやれたと思いますよ。しかし、それが自分の進むべき道だと思えば、大体どんなことでも耐えられるものですね。
*大友・・・・うん。そのとおりだよ。新国劇時代は、修行が厳しかったからね。先輩たちの舞台を幕の袖からジッと見ながら会得していかなくてはならない。それにあの立回りの稽古。これがまた厳しかったねエ。
*橋蔵・・・・亡父の菊五郎は、芸にかけては、あれほど厳しい人はありませんでした。初めは辛くて、辛くて。でもそのうちに、亡父の厳しさは自分自身に対してはよりいっそう厳しいのだな、ということが分かってからは、辛いなんてことは忘れてしまいましたねネ。六代目も、芸は自分で極めるものだという信念の人でしたから、手に手を取ってなんて教え方は決してしませんでした。その代わり、突然、「富成××を踊ってみろ」とか、「どこそこをやってみろ」とか言うんです。出来ずにマゴマゴしていると、お前は、俺の側にいて一体何を見ていたんだ」って頭から怒鳴りつけられる。それが恐くて、亡父の舞台は、目を皿のようにして見たものですが、今考えると、何故、もっともっと亡父の舞台からあらゆるものを吸収しておかなかったのかと悔やまれますよ。
*千代之介・・僕なんか六代目の舞台っていうと、とんでいって見たもんですよ。なにしろ僕は大の歌舞伎ファンですからね。もうあの世界に入りたくってどれだけ奔走したかわかりませんよ。
*大友・・・・でも、いまじゃ、こうやって東映歌舞伎に出られる。千代ちゃろんの初志が実ったってわけだネ。
*千代之介・・断念して映画界に入ったのが、夢の実現への近道だったという次第で。
------ ----- -----
*千代之介・・橋蔵君は、二枚目半的要素が多分にありますね、先輩。
*大友・・・・多分なんてものじゃない百パーセント。(笑)
*橋蔵・・・・百パーセントはちょっとひどいですよ。
*千代之介・・フフ・・。
*大友・・・・いやだねエ。思い出し笑なんてエのは。
*千代之介・・失礼、失礼。いやア、橋蔵君の「花の折鶴笠」のオトボケぶりを思い出しちゃったもんでネ。
*大友・・・・ハッハッハッは、ありゃア実にいい、けだし名演技だよ。
*橋蔵・・・・丹下流の笑いで吹き飛ばされると褒められているのか、貶されているのかちょっと分からないけれど、僕は好きだナ。苫の半太郎って役。
*千代之介・・僕も好きだな。実にやりがいがある。あれは長谷川一夫さんが主演で映画化されたんだっ・・。
*橋蔵・・・・そうなんですよ。戦前は「旅の陽炎」戦後は「折鶴笠」っていう題名で二度映画化されています。僕は両方とも見たんですけれどネ、何時まで経っても印象に残っていますねエ。それで今度の演しものをあれやこれやと考えているうちに、そうだこれを、と思い立って作者の犬塚稔先生にお願いし、舞台ように書き直していただいたんですよ。
*大友・・・・小悪党だが、人間味がある。野卑だが愛嬌がある。生まれっぱなしみたいなこの男の野放図さを、よく演じきっているよ。
*千代之介・・つんつるてんの牛方のどてらを着た橋蔵君は、ほんとうに可愛らしい。
*橋蔵・・・・可愛らしいはないでしょう。堂々たる大人をつかまえて。
*大友・・・・「濡れつばめ」がどちらかといえば思い芝居だから、組み合わせとしては最高だね。
*千代之介・・川口先生は、この道じゃあなんといってみ第一人者ですねエ。
*橋蔵・・・・台本をいただくまでは、そりゃア夜も寝られないくらい心配しちゃいましたけどネ。脚本を読ませていただいたとたん、天にも上るような心地。そして翌日からは脚本まけしちゃうのではないかとまたソワソワ。とうとう七月の半ばには東京へすっ飛んで来てしまいましたよ。
*大友・・・・分かるよ、その気持ち。脚本のことや演出上の相談で稽古に入る前に、何度も東京まで飛んできては、安心して京都に帰るのだが、帰るとまた心配になって今度は電話にしがみつく。そんなことを繰り返していたら「そんなに心配なら止めちまえ」って怒鳴りつけられてしまったよ。
*千代之介・・台本もらった時は、何かこう背筋がシャンとしましたからネ。
*橋蔵・・・・撮影所で会ったら、千代ちゃんにっこり笑って「きましたよ」。
*千代之介・・橋蔵君もにっこり笑って「いよいよですね」って・・。
*大友・・・・張り切っちゃったからネ、みんな・・。
----- ----- -----
*橋蔵・・・・長い間舞台を離れていると、声の出し方までわからなくなってしまう。
*千代之介・・おなかから出さずに、のどでふりしぼってしまうから、すぐに声が割れる。
*大友・・・・千代ちゃんは長唄で鍛えているから、あまりワレないよ。僕は最初のうちまいっちゃったネ。つい怒鳴っちゃう、のどに力を入れてしまうので、声はワレるしセリフは飛ぶし、初日までもつかと、谷屋先生もハラハラしていたからネ。
---- ----- -----
*橋蔵・・・・先輩は、大分早くから稽古にはいられましたネ。
*大友・・・・うん、折角東映歌舞伎と銘打ってお客様を集めるんだから、学芸会みたいな事にしたくないと思ったんでネ。
*千代之介・・そうなんですよ。僕も念願かなっての舞台なんで、毎晩テープレコーダーの前に腰をすえては、賢明にセリフの練習をしました。
*橋蔵・・・・舞台だけはNGがだせませんからネ。その日その日が一本勝負。いい勉強になりますよ。
*大友・・・・これを機にまた、みんな大きく成長するだろうね。
---- ----- -----
*千代之介・・東映歌舞伎は若さの集い。
*橋蔵・・・・うまいぞ。(笑)
*大友・・・・東映歌舞伎は青春のシンボル。
*千代之介・・これもイカス。(笑)
*大友・・・・とにかく楽しい。
*橋蔵・・・・理屈なしに楽しい。
*千代之介・・これからますます張り切らなくっちゃ。
*橋蔵・・・・だけど油がのりきったところで楽日ってことになるのだろうナ。
*大友・・・・そうさ、だけどそこが又いいとこさ。
---- ---- -----
*千代之介・・先輩なんかは万年青年。
*大友・・・・それはちと、オーバーだけどね。
*橋蔵・・・・白地に梵字を書いた着流しスタイル。愛刀濡れつばめを口にくわえた大友左膳の舞台姿は、まさに青春のシンボルですよ。
*大友・・・・片目片腕の青春なんて、あまりイカサないぜ。
*千代之介・・いや、それがなかなかカッコイイ。(笑)
*橋蔵・・・・千代ちゃんの浪人姿もカッコイイ。(笑)
*千代之介・・橋蔵君の風来坊もカッコイイ。(大笑)
*橋蔵・・・・あれはカッコイイとはいわないの。僕の人間的に良さがにじみ出ているだけ。(笑)
*千代之介・・アレ、随分大きく出たねア。
*橋蔵・・・・まかしとけ、まかしとけ。
*大友・・・・何をまかしとくんだか知らないけど、当分撮影所も歌舞伎ブームだろうネ。
次回も、第一回東映歌舞伎の稽古の時期の橋蔵さまの様子を載せたいと思っています。
(画像の上に👆が出るものはクリックすると違う画面でも見ることが出来、拡大されている画像もあります)