別れを告げる仁吉の心情を思う
今回は出演者の字幕が出ても役柄が書いてありません。当時ポスターなどを見てから映画館で見た方は何となくわかったでしょうが、大部分の方はどういうストーリーでくるのかわからなかったのではと思います。というのは、荒神山での仁吉と安濃徳の話は少しですが出てきていましたから。作品の進み方により、最初に吉良の仁吉、安濃徳が出て来ますので、荒神山のやくざ同志の大喧嘩に関することから始まる内容なのだと分ります。大体は次郎長ものといえばお決まりの題材が脚色されていますから、この映画は、筋書にそって出てくる人物を把握していくパターンになって、この俳優がこの役とスクリーンに映し出されるのを追ってゆくところに面白味は感じます。
「仁侠東海道」の後半部分で吉良の仁吉が出ていました。
その仁吉と安濃徳の荒神山での大喧嘩が起こる過程を、改めて違った視点、今回は女房お新の安濃徳と仁吉の関係から仁吉夫婦を前編に持ってきています。仁吉が27歳のときの出来事ですから、橋蔵さんとひばりさんの夫婦は子供が出来たまだ新婚夫婦がぴったりです。第一の見せ場は、仁吉が女房お新の父親安濃徳と対決をするため、お新と離縁する覚悟を決める場面でしょう。お新は仁吉が心からそんなことを考えているとは思わず、にこやかな笑い顔を見せ、安濃徳を説得に向かう、渡された書状は果たし状とお新と離別の書状とは全く知らずに・・・。お新を見送り心の中で別れを告げる仁吉の心情を思うとやりきれない気持ちになります。
名づけ親次郎長に誕生を迎えた太郎吉を見せようと女房お新とやって来た吉良の仁吉のところへ、兄弟分神戸の長吉がやってきます。荒神山の縄張りをお新の父安濃徳に奪われたというのです。安濃徳に荒神山の縄張りを長吉に返してほしいと頼みに行きますが、安濃徳と黒駒の勝蔵は結託して、女房子供が可愛くないのかと仁吉を脅したうえ、次郎長との縁も切るよういってきます。そして、荒神山を返してほしいなら「ドスで来い」と強気な安濃徳の姿に決心をかため、お新と子供が待っている家に帰って行きます。
帰って来た仁吉の様子からお新も何か様子が違うのを感じとっています。
子供の寝顔を見た仁吉は、お新に安濃徳のところで逢ったことを話し、別れ話を切出して行きます。
♠(そう言えば、当時この映画を家族で見にいったとき、ひとつ前の上映時間の途中から映画館へ入りました。そのときスクリーンに映し出されていたのが、このシーンだったのです。橋蔵さんの仁吉は30分位のところにしか出て来ないので、お新との別れから荒神山の出入りまでは、得した気分になりました。)
お新は父安濃徳のところに行って頼んでくると駕籠を呼び何故か後ろ髪を引かれながら出立しようとしていると、仁吉が安濃徳にもう一度自分からもお願いをしてみると書状をお新に渡します。お新が駕籠で出かけるのを見送った仁吉の表情には悲しいものがありました。お新が仁吉から渡されたものは三下り半だったのです。
💎橋蔵さんとひばりさんの夫婦役は「丹下左膳」でもありましたが、まだトミイ・マミイと呼ばれて人気絶頂の若かったお二人に合った設定のものでした。そして、このとき辺りからひばりさんの独立の話があり東映専属でとの話が持ち上がっていたはず、それもあり新芸プロ専属としての二人の共演として丹下左膳での夫婦役ができたとも考えられますね。
そして、この「勢揃い東海道」が作られる時期は、東映はひばりさんを現代劇中心で考えていたと思いますがうまくいかず、ひばりさん側がテレビや舞台に移ろうとしていたとき、時代劇映画も下降線をたどっていたこともあり、オールスター映画もこれまでと考え、最後にふさわしく、期待しているだろうトミイ・マミイの再現を仁吉夫婦役で持って来たようにも感じられます。作品の時期が時期のため私はその考えも外せないと考えてしまいます。(個人的な考えですので、お許しくださいね。)
「勢揃い東海道」でのお二人は、年月を経て十分な大人になりましたから、やくざの世界に生きるあの別れ話の場面には、お互いを見つめ合うしっとりとした落着きの中に甘さと切なさが感じとれ、同じ色気を持っていますから演技以上の心情が重なります。特に、お新を演ずるひばりさんの素晴らしさに見入ってしまいます。
♢「勢揃い東海道」の作品内容はこの先ブログの方で細かく載せていきますので、
ここでは、私が二人の場面を見ていて雰囲気が心を揺さぶって来るところからちょっとだけ載せてみました。
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☘橋蔵さんとひばりさんの場面から心情表現として目に残ったところは、次のところになります。画像で載せますので、下記のURLをクリックしてご覧になってください。
💻 https://sugi-nami.blog.jp/archives/16487360.html
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🐧第二の見せ場は荒神山の大喧嘩ですね。ただ臨場感ある東映時代劇だとは思いますが、私は何故かもう一つ冴えたものを感じません。動きはありますが軽いのです。橋蔵さん演ずる仁吉の意気ごみと動きの速いドスでの立廻りは凄いと思います。ここは橋蔵さんの立廻りを見せるための演出ということも理解できます。それにしても重みを感じないのは何故でしょうか。これはいえるかもしれません、この場面は仁吉が撃たれ、安濃徳を殺さないでくれと次郎長にお願いすることで、いよいよ次郎長が出てくるステージにつなげる役割の場面ですから仕方ないことかもしれません。ただスクリーンに映し出される時間は長いのですが、映画が終った時には、思ったほど橋蔵さんの仁吉は印象に残っていないと思えることもあります。これがオールスター映画の良いところ・・・と納得しましょうか。
この4作品の次郎長任侠もので、各スターが年代でそれぞれの身の丈にあった役柄を演じていましたが、皆様はどのスターのどの役柄のどんなところが見ていて魅かれましたか。その役はやっぱりこのスターでなければ・・・というものが見えてきますね。
✋(画像をクリックすると拡大できます)
金糸雀様
一番いい場面の写真をアップして頂き嬉しいです。(すみません、携帯に保存しました)
この雰囲気を見たら余計に、トミーマミーの夫婦役のパッピーエンドの映画が欲しかったと思います。きっと撮影の待ち時間も、仲良くされていたんでしょうね💛💛
有難うございました。
私は親子水入らずの場面、帯を結ぶのを手伝ってと言って結んでやる二吉。
嬉しそうなお新。このシーンが何度見てもたまりません。
そして鏡を覗き込む・・
とても愛情溢れるシーンで大好きです。
主人にこんなことしてもらいたかったですね。
帯の締め方で、着付けもしっくり行きますものね。
私の中では任侠4作ではこの勢ぞろい東海道が一番です。
ひばりちゃんとの夫婦という設定で、男くさい男の中の男
を感じました。