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スレッドNo.90

フルニエのバッハ

先日、KANさんに紹介頂いたロストロホーヴィチの演奏のバッハの無伴奏チェロ組曲は素晴らしいですね。タンノイがチェロの音色を心地よく響かせバッハの世界を堪能できます。私の愛聴盤はフルニエです。

 今日の1枚・*4 CDピエール・フルニエ バッハ無伴奏チェロ組曲です。バッハの無伴奏チェロ組曲について、私は、バッハの無伴奏チェロ組曲を聴くたびに、思い出す情景があります。ある詩人の書いた文章を思い出すのです。

スイスの山の保養地で、エンガディーンの風光を愛していたヘッセは、年をとってからもたびたび訪れたらしい。ある年の夏、同じホテルにチェロの名手ピエール・フルニエが泊まっていた。お互いに、名を知り、お互いの芸術の仕事についても知り合っている二人は、顔を合わせれば挨拶を交わす仲であった。そして、フルニエが避暑地を終わって帰る日に、ヘッセに、彼のためにバッハを弾いて聴かせようと申し出た。

 ヘッセは、体と気分の調子が良くなかった。しかし、彼は無理をして、約束の時間に音楽家の部屋を訪れ椅子に腰を下ろしたが、どうにもおも苦しい気分であった。ところが大家フルニエが向こうの椅子に腰かけてチェロを構え、弦の調子を合わせると、自分や周囲の不平不調和の空気に代わって、たちまちヨハン・セバスティアン・バッハの清らかで激しい空気が部屋中に張り詰めた。彼は、重い気分の谷間から遥かに高い透明な山頂の世界に引きあがられたような気持ちになった。つまり、日常の世界を脱して密度の高い非凡な世界に向かって踏み出すことを、彼は、バッハの無伴奏チェロ組曲を2つ聴きながらその部屋にいた。

 この情景を思いながら、無伴奏組曲をタンノイで聴けば、あくまでも端正で深く浸透して、聴くものの心を捉えずにはいないフルニエの演奏とヘッセの感じた、音楽家への感謝の気持ちを思いだします。 長年、タンノイで音楽を聴く生活をしていて、その音楽から思い出す情景の紹介でした

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