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スレッドNo.357

特集:「仁」とは──

特集:「仁」とは──
 孔子が、その教えの根本にすえたのは「仁」です。あえて一言でまとめてしまうと、「仁」とは“人を愛すること”です。当時の世の中の乱れは、他人を思いやる愛情が失われていったことが原因で、真心や思いやりを大切にして人を愛する心をとり戻すことが何よりも必要だとして、「仁」が最も重要だと位置づけたのです。もっとも“人を愛すること”といっても、これだけでは曖昧でわかりにくいので、「仁」は、具体的には「孝悌、克己、恕、忠、信」という個別の現れ方をするのだと説きました。「孝(こう)」=子が親に尽くすこと、「悌(てい)」=弟が兄に尽くすこと、「克己(こっき)」=私利私欲を抑えること、「恕(じょ)」=他人に対して思いやりを持つこと、「忠」=自分の心に素直なこと、「信」=人を欺かないこと、という具合に説明したのです。とりわけ、近親者への思いやりを説いている「孝悌」を、「仁」を実現するための基本中の基本であるとして重んじました。

「礼」とは──
 ところで、人を愛する「仁」は、あくまで人間の内面にある情ですから、他人には伝わりにくいのが難点です。そこで、孔子は、「仁」が態度や行為として外面に現れたものを「礼」と呼んで区別しました。そもそも「礼」とは、古代中国における、人が従うべき社会規範のことを意味していて、孔子は内面の「仁」と外面の「礼」を結びつけ、行動として外面に現れる「礼」を正しく復興させることで、社会秩序を再建しようとしたのです。さきほど「孝悌」のところで説明したように、近親者や友人などを思いやることは人間にとって特に大切であり、そういった気持ちをふさわしいやり方で行動に表そうとしたのが「礼」なのです。「仁」を実践して「礼」として行動に表すにあたり、「克己復礼(こっきふくれい) 」という言葉が使われました。「克己復礼」とは、私利私欲を抑えて「礼」に従うという意味です。そのように他人と接することを心がければ、良好な関係を築いていけます。少し飛躍して、これをアドラー心理学の「共同体感覚」と重ねたりしています。
 「仁」と「礼」をともに兼ね備えた人物こそが為政者にふさわしく、理想を体現しようとする為政者が人々を道徳的に導くことで、平穏な世の中を実現することができると考えました。権力をふりかざす政治を否定し、為政者の徳性によって人々を治めるべきだとする政治論を「徳治主義」と言います。「仁」や「礼」とともに「徳治主義」も、孔子について学ぶのに大切なキーワードですので、あわせて理解しておきましょう。

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