選句鑑賞
11 歳旦祭氏子の弥栄コップ酒 (和談) 3
弥栄はイヤサカと読み「ますます栄える」の意の様だ。ボーイスカウトに係った私は式典などで
体験した。お祝いでは枡に日本酒だろうがこの場合はどうか。祖先神を同じくする氏子がコップ酒
で祝う。イヤサカ・イヤサカ・イヤサカア~の掛け声が聞こえてくるようだ。
28 半眼の猫と聞き入る除夜の鐘 (茶々) 2
作者は無類の愛猫家。炬燵で暖まりながらの年越しだろう。年越しそばで一杯やりながら聴く除
夜の鐘。愛猫と至福の時を共有しているのだ。猫には煩悩があるのだろうか。
59 小雪舞ふ赤富士眺む露天風呂 (令淑) 4
今回露天風呂の句が2句あったが両方とも戴いた。赤富士に小雪、整った場面設定の中ゆったり
と露天風呂に身をゆだねている作者。句の甘さが気になったがお正月ということで。
65 庭に色あるだけでよし冬の草 (森野) 2
「易しい言葉で中身の濃い句を」をモットーに探していてこの句に出会った。子孫を残すため雑
草にも花が咲くということは当然の摂理だが、名前も持たない可憐な花。作者は「色あるだけでよ
し」と突っぱねている。冬の草冥利に尽きるのでは。迷わず特選に戴いた。
67 大吉にかすかな不安初神籤 (手毬) 4
私にも経験がある。あまりにも旨すぎる神のお告げにふと不安がよぎる。勿論凶では気になる
が。小吉くらいで気兼ねなく安心できるのだが。
87 翅一枚欠く冬蝶の足る知らん (かをり) 2
この句の選で迷ったのは下五、「足る知らん」、どうもしっくりこない。言わんとしていること
が分かるだけにまどろっこしい。いろいろ考えたが結局は原句以上のものは浮かばなかった。
98 露天湯や湯気の向かうのオリオン座 (尾花) 2
露天風呂のだいご味は何といっても外気に触れること。特に大自然に触れることは浮世を離れた
解放された自然体になれる。冷気に触れた湯気、その彼方に星がきらめく。それがオリオン座とき
たら最高だろう。作者は一句を仕留め忘れぬうちにと早々に部屋へ引き上げたかも。
ナチーサンさん、98番のオリオン座の句の感想をありがとうございました。
年末の30日に息子家族と温泉宿に行きました。 多忙を逃げる後ろめたさもありましたが、若者に合わせてその日に。
皆が寝静まった深夜2時頃目が覚めてしまったので、静かに起き出し、部屋に付いている露天湯に一人入ることに。乳白色の柔らかいお湯に浸かり、空を見上げれば嗚呼オリオンが、古い歌でも歌いたくなる気分で「さあ、もう少し頑張って生きて行くんだ・・・」と。自分へのご褒美の旅(刻)でした。
ナチーサン、87 翅一枚ありがとうございます。
意外かもしれませんが、私は俳句は写生、デッサンが基本だとおもっております。
翅一枚欠く冬蝶までは写生、さてここから主観だの境涯の一振りをいれたいのです。
境涯が充満すると先月の聖夜の苦になります。一振りの香辛料でいいのです。
足るを知りたい自分があるから、足る知らんと詠んでみました。
足る知るや翅一枚の冬の蝶 元句はこれですが、盛りすぎで、私なんぞが読むと説教臭いので。
しかし、こうして再考してみますと、とても勉強になります。ありがとうございました。