アイビーの俳句鑑賞 その2
アイビーの俳句鑑賞 その2
11 頃合いに次の熱燗運ばるる (ABCヒロさん)
小料理屋か何かの光景であろうか。手際よく料理を運び、熱燗が途切れる頃合を見計らって出す。心憎い気配りだ。これが逆のケースになると悲劇だ。料理は来ない、酒はとっくに空になっているのに燗がついてないと来ては、座は白けるばかりだ。そこのところを上手く采配するのが女将の腕だろう。おかげで論壇風発、酒席はいやが上にも盛り上がる。
15 夫婦して続く寒波に老いの愚痴 (令淑さん)
今年の冬は、初っ端の豪雪でてんやわんやしたから、随分寒かった印象がある。いつまで寒い日が続くんだと、夫婦して愚痴ともボヤキともつかぬことを言いあっているのが可笑しい。寒い冬とか暖冬とか言うが、これは多分に印象に左右されることが多い。気象庁の統計では真逆の結果になったりするから印象も当てにならない。
21 豆まきの投げは大きく声低し (いちごさん)
当節は近隣からクレームが来るから節分の豆まきもおちおち出来ない。いきおい声を潜めて「鬼は外」とやる仕儀となる。どうも世知辛い世の中になったものだ。野球のピッチャーではないが、モーションは大きく振りかぶるのに、豆を撒く掛け声は蚊の鳴くような声になり、まるでしまりが無い。動作と声のギャップをマンガチックに捉えユーモラスな句になった。
28 きりきりと二月の風に揉まれけり (菫さん)
私が特選にいただいた句。2月、暦の上では春なのに一段と風は冷たい。正に早春賦の「春は名のみの風の寒さよ」を実感させられる。この風の冷たさを表現するのに作者は絶妙なオノマトペを用いた。ありきたりのオノマトペでは平板になるし、奇抜過ぎれば読み手が共感しない。その点、「きりきり」は言い得て妙だ。「きりきり」を発見した作者の感性に拍手。
34 一斉に笛を合図に野火走る (森野さん)
野焼きは個人個人でするよりも字単位で一斉に日にちを決めて行う。経験豊かな長老の合図で点火するのだが、野原は十分に乾燥しているから瞬時に火が回る。まるで火が生き物のようだ。その様を「走る」と表現した作者の目は的確だ。
57 三年振りスキー出来たよ筋肉痛 (無点)
惜しくも無点となったが捨てがたい味のある句。作者の年齢を存じ上げないが、なにせスキーをするのが3年ぶり
という。上手く滑れるかどうか不安だったが、そこは昔取った杵柄、案ずるよりなんとかで3年前と同様に滑れた。
作者の気持ちの高ぶりが、やや粗削りな句の調子と却ってマッチしているように私は感じた。
(以下次号、不定期掲載)
57 三年振りスキー出来たよ筋肉痛
ネタバレで返信迷いましたが儘よです。御年73、出来たんですよ、嬉しくての句です。上級コースも、ちょっとスピードに慣れない感がありましたが。後の筋肉痛大変でした。アイビーさんお取上げ有り難う御座います。