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スレッドNo.1182

アイビーの俳句鑑賞 その4

アイビーの俳句鑑賞 その4
6 和紙透くる柔き光や春立ちぬ (ナチ―サンさん)
和紙は近年、世界遺産に登録された美濃和紙などを始めとして再評価されている。洋紙には無い自然の光沢と柔らかさが見直されたのだ。愛知県では小原村(現、豊田市小原地区)が和紙の産地として知られる。その柔らかさを強調するのに、紙を透かす光が柔らかいとワンクッションおいて表現した作者。駘蕩たる春のイメージを醸し出すのに成功した。今月のトップに並んだ秀句。

42 雪降りて樹木の描く楕円の美 (和談さん)
雪が樹木の枝に綿帽子状に降り積もった様を「楕円の美」と把握した作者。この句の肝はいつに「楕円の美」にあると言って過言でない。やや分かりにくいと言う人もあるかも知れない。その場合でも、作者の感性が優先されるのは当然で、4点を得たことに自信を持ってよいと思う。

69 狐火やいまよみがへる資本論 (てつをさん)
狐火は、夜間に明りが一列に点り、数が増えたり減ったりするする原因不明の現象で、冬の季語。資本論は言うまでもなくカール・マルクスの著作で、20世紀を席巻した。だが現実には唯物史観に立脚した国家運営は悉く破綻し、辛うじて中国と北朝鮮が命脈を保つのみだ。だからと言って資本論を、単なる知識階級のノスタルジア、あるいは前世紀の遺物として葬り去ってよいのかという、深刻な問いかけと解釈したい。現実社会を覆う閉塞感、貧と富の二極に分化する社会構造。答えは容易には出ない。闇夜に浮かぶ狐火のように捉えどころがない。

29 空っぽの箱につまづく春浅し (えっちゃんあらさん)
73 決められぬ本音を置いて二月尽 (えっちゃんあらさん)
 いずれもえっちゃんあらさんの高点句。ちょっとした人生の機微をついた秀句だ。句に込められた寓意は様々な解釈が出来るが、私たちが日常で遭遇する色んな局面で思い当たる節は多々あるのだ。作者自身は「いや、そんなことはない。深読みのし過ぎ」と言うかもしれないが、一たび読み手に渡った俳句は作者の手を離れる。これは宿命だ。

80 五十路なり出しては仕舞ふ春の服 (無点)
この句も無点だが人間の機微をついた面白い句だ。五十路はジャスト50歳のこと。色香はまだまだ衰えていないが、さりとて溌溂とした若さも無い。非常に微妙な年齢が50歳なのだ。春の衣服を出したのはよいが、派手過ぎないか、いやこのくらいは着こなさなければ、心は千々に乱れる。「出しては仕舞ふ」が無性に可笑しい。

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