選句鑑賞
7 鰊群来語りとなりし番屋跡 (森野さん) 3
鰊(にしん)は北海道の特産だった。鰊屋敷などの言葉も残る。鯨が関西の湾に迷い込んだ。気候変動で今後の生態系の動静が気になる。この句、さらっと詠んでいるが上五の選択、座五に番屋跡を置くなど推敲の後が垣間見える。心に残る句だ。
23 真ん中は妻の領分畑を打つ (玉虫さん) 7
特選に戴いた。多くの方の共感を得た作品。この機械化が進む農業の中でわが国の農業の原点を見せられた思いだ。特に中七に家族の繋がりが垣間見られ共感した。この句へのウグイスさんのコメントを参照されたい。
66 雛食べよ三河味ぞやいが饅頭(茶々さん) 2
いが饅頭がどのような饅頭かは存じないが雛段に飾っているのだ。普通雛段には生ものは載っていないと思うが作者の思いが三河味の措辞で伝わってくる。雛ならずとも一度食してみたいものだ。
70 宇治橋の擬宝珠触れ行く伊勢参 (玉虫さん ) 2
お伊勢さんの内宮の宇治橋の欄干に16基の擬宝珠(ぎぼし)があり、橋の安全と触れて帰るとまた参拝ができるということで人気スポットになっているようだ。作者はぎぼしに触れ何を願ったのだろうか。
81 侘助や織田の有楽は数寄大名(アイビーさん) 1
織田有楽は信長の弟で武より文の面に優れた才能を持ち茶道を極めるなど数寄大名と呼ばれた。また機を見るに敏で微妙な戦国時代を生き抜き後家康に仕えた。地元では根強い人気を持つ。この句、季語の侘助が効いている。
101 地震の悲話語り継がれて春の雪 (ウグイスさん) 4
3.11も過ぎ早くも12年の歳月が流れたが悲しみは消えない。大府でも「せいれいの会」という環境保全の会で毎年この時期池に灯籠を流し会員の和尚の誦経で追悼式を行っていたが会員の高齢化で10年を機に会を解散した。元代表者が岩手の方で親類の多くは未だ見つかっていない。春の雪が切ない。
104 宿坊の按摩の指に忘れ雪 (かをりさん) 2
ホテルでなく宿坊、マッサージ師でなく按摩。相変わらずかをりさんの世界は古風だ。が、この方が心の琴線に触れる。忘れ雪の座五が効いている。
ナチーサンさん、104 宿坊、ありがとうございます。
これはあん摩さんにはじめてお会いしたごく幼少のころの思い出です。お見かけして、とても不思議な感じがしました。
祖母は某宗派に熱心でしたので、連れて行かれたのでしょう。春浅き、幼きころの思い出です。