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スレッドNo.1322

アイビーの俳句鑑賞 その3

アイビーの俳句鑑賞 その3

9 春霖やさみしい時は手をたたく (えっちゃんあらさん)
45 拳万の小指短し春夕焼け (えっちゃんあらさん)
えっちゃんあらさんの句は、ユニークなハンドルネーム同様に、発想と言葉づかいが自由奔放で新鮮だ。「さみしい時は手をたたく」などは、なまなかな発想では出てこない。それが句の雰囲気に合っているからたいしたものだ。季語の斡旋もまたユニークで、春霖も春夕焼けもよく見つけたものだと感心する。勿論すべての人が共感している訳ではないが、えっちゃんあらさんの得難い個性ということは間違いない。

16 温床やあさ観てひる見ゆうに視る(てつをさん)
温床、温室、フレーム何れも冬の季語とされる。温床を毎日3回覗くのだが、同じ「みる」でも観、見、視とそれぞれニュアンスの違う字を使い分けた。更に、あさ、ひる、ゆうは全部平仮名で統一するという徹底した配慮ぶりだ。それぞれ作者に明確な意図があってのことで、てつをさんの真摯な句作態度に敬意を表したい。上五を切れ字「や」で切っているがどういう意図であろうか。意味の上では上五、中七、座五とつながっている。

23 真ん中は妻の領分畑を打つ (玉虫さん)
今月のトップになった句。おそらく夫婦の共通の趣味で色んな作物を作っているのだろうと想像する。本職の農家のように生活のためではないから、夫々が作りたい作物を作っているのだろう。いきおいエリアを決めて此処からこっちは夫、そっちは妻と担当エリアが分れているのだろう。夫婦の作物の好みは異なっても土いじりが好きな点は共通している。同じ趣味を持つ夫婦、羨ましい老境だ。

18 炎駆け無病息災春告げる (和談さん)
奈良東大寺のお水取りを詠んだ句であろうか。「炎駆け」と表現したところが詩的な表現で巧い。しかし、お水取りを知らない人には何のことか分かりにくいので、例えば「僧走る」とか、僧という語が一つ入ればお水取りのことと読み手にも分かり易い。あるいは「お水取り」という言葉自体が季語なのでそのまま使う手もある。そうすれば、「無病息災」も「春告げる」も言う必要がない。

66 雛食べよ三河味ぞやいが饅頭(茶々さん)
雛祭りの行事食としていが饅頭を食べる風習はどうも西三河独特のようだ。私事だが私の妻が西三河の知立の出で、妻の実家の雛祭りには必ずいが饅頭とおこしもんが出てきて少々驚いた覚えがある。茶々さんには申し訳ないが正直なところ、味にはクエッションマークがつく。ところが西三河の人からすれば、こんな美味いもの何故食わんとばかりに勧めるのだ。こちらが遠慮して食わないと思っているから、なおも勧める。この句を拝見して、ふとそんなことを思い出した。茶々さんは何とお雛様にまで食べろと強要する。お雛様はしらーッとしているばかりで眉一つ動かさない。当たり前だ。                             

89 変な嘘ニヤけ夫は四月馬鹿(無点)
エイプリルフールということで、ひとつ妻をかついでやろうと思ったのはよいが、嘘が不自然極まる嘘でとっくにバレバレなのだ。嘘を吐いた当のご本人もなにやらニヤニヤしている。要するに普段から嘘など吐き慣れていない、口下手で誠実な日本男児の典型のような人物像が見て取れる。妻の方もそんな夫のよき理解者であり、なによりも信頼の絆で結ばれているのだ。俳句自体は少し粗削りなところがあるが、とある家庭の雰囲気がよく伝わってくる。

以下次号、不定期掲載

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