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スレッドNo.2306

アイビーの俳句鑑賞 その2

アイビーの俳句鑑賞 その2
例によってアイビーの俳句鑑賞3原則に則ての感想です。お気に障ったら平にご容赦。

秋黴雨ぱちんと開く女傘 (糸瓜)
秋の長雨を秋の梅雨入りという意味で秋黴雨(あきついり)と言う。長雨で傘を開いたという、それだけの句意だが、「ぱちん」という擬態語を入れることによって立派な俳句になった。一歩間違えれば単なる駄句になるところを、「ぱちん」を入れるだけで俳味の味が出た、この辺りが俳句の玄妙なところ。

言ひ難き事も言はねば秋扇 (糸瓜)
作者自身、様々な葛藤を経てたどりついた心情。上五、中七でこうした心情を吐露し、座五の「秋扇」と取り合わせた。作者は推敲を重ね、特に季語の斡旋は作者自身が考え抜いて、これしか無いと決めたのだろう。それが成功したからこそ、8点の支持を集めたに相違ない。

リュック背負ひ年に一度の震災忌 (ゆめ)
リュックの中には非常食や懐中電灯、その他の防災グッズが入っている。これら防災グッズを点検し、新しいものと交換するのが210日の震災忌なのだ。雰囲気のある句となった。

口開けて見とれた月のうさぎかな (ゆめ)
仲秋の頃の月は空気が澄み、俗に月に兎がいると称される月面の窪地の模様が鮮明に見える。仲秋の満月ともなると、普段の倍ほどもあろうかという月が東の空に上る。あまりの見事さに声を出すのも忘れ見惚れている作者。

暗殺や太刀を持たざる菊人形 (ABCヒロ)
秋たけなわともなると、各地で菊人形展が開かれる。菊人形のモチーフは、歴史上の名場面とかが題材になることが多い。この菊人形は何と暗殺の場面に題材を取った。血なまぐさい暗殺の場面だけに、あまりリアル過ぎても具合が悪い。暗殺に使った刀が無いのだが、無くてもあるという約束事で菊人形は成り立っている。観客も敢えて異としない。そこに俳味が生まれる。

秋天を仰ぎ寝風呂の石枕 (ダイアナ)
石枕とあるからには温泉の露天湯の場面であろうか。しかも、湯船には作者のほかは誰もいないシチュエーションを想像する。思い切って伸び伸びできる。広い露天湯を独り占めして、リラックスする作者。秋天までも独り占めした気分だ。寝風呂も石枕も作者の造語だろうが違和感を全く感じない。季語の斡旋も的確だ。私が特選に頂いた句。

秋来れどよれよれTシャツまた出番 (ヨヨ)
立秋を過ぎたのにこの暑さはどうだ。地球規模で変調をきたしている。例年なら夏物から秋の物に変える時季なのに。そう愚痴りたくなる今年の暑さを俳句にした。気分はよく出てるが、難を言えば少しゴチャゴチャし過ぎの感も。俳句は17文字しかないのだから、極力、省略できるものは省略したい。上五の「秋来れど」が説明的なのも気になる。アイビー流に詠めば Tシャツを未だ仕舞へぬ残暑かな

翅搏ちて供華に触れてゆく炎暑かな (無点)
惜しくも無点句となったがいい雰囲気を出している。「翅搏ちて供華に触れてゆく」と炎暑に因果関係は全くないので、季語炎暑との距離感は良い。だが、翅搏ちて供華に触れてゆくものが何であるのか分からないのは困る。正体を明らかにして欲しい。作者は季重りを嫌ったとも考えられるが、季重りになっても止むを得ないと私は思うのだが。

以下次号、不定期掲載

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