アイビーの感想 その2
碁敵を待ちて昼寝の高鼾 (山口さん)
夏の昼下がり、無聊を持て余している。碁敵の友人から来るという連絡があった。一つ揉んでやるか、それまで少し時間があるからひと眠りするか、と昼寝を決め込んだ。平和で長閑な庶民の夏の一コマを、やや戯画化してユーモラスに描写した佳句。4点を集めた。
向日葵や萬はあらうか目の前に (無点)
南知多町の観光農園であろうか。見渡す限り向日葵の丘。向日葵の迫力に圧倒される作者だが、惜しくも点が入らなかった。中七の「萬はあらうか」の反問の「か」に切れがあるともないとも断定できないが、三句切れの印象を避けるために上五は「向日葵の」としてはどうか。座五の「目の前に」にも一工夫欲しい気がする。
開けずとも木箱に匂ふメロンの香 (ふうりんさん)
この句も4点が入った句。食べ頃を確かめるまでもなく、甘いメロンの香りが漂って来る。小道具の木箱が大きな効果をもたらしていると感じた。作者は実際にメロンを味わった時ではなく、切る前のワクワク感に焦点を当てたところが成功の要因と見た。
取り敢へず布に包みし兜虫 (玉虫さん)
小さな男の子にとって兜虫は宝物。偶然、兜虫を捕まえたのはよいけれど入れるものが無い。孫に持って帰りたいがどうしよう。紙に包んでバッグの中にでも入れておこうか。こういった一連の心の動きを上五の「取り敢へず」で表現した手際の良さに脱帽。
蔵書印薄れし父の書を曝す (玉虫さん)
5点を集めた句。近頃の威厳の無い父親と違い、古風な謹厳な父親像を想像する。かつての読書階級は蔵書に蔵書印を捺したものだ。年月を経て蔵書印が薄れた父の蔵書を虫干しする作者。姿勢正しく書見するありし日の父親像を彷彿とさせる。
祭り果つ古老の叩く捨て太鼓 (ナチーサンさん)
捨て太鼓を広辞苑出引くと、時刻を告げる太鼓を打つ前に, 注意をひくため, 定数のほかに打ち鳴らす太鼓の音、とある。この句の場合は、祭りのフィナーレ前の太古の乱れ打ちという意味であろうか。どこの祭りかは分からないが、おそらくフィナーレ前の祭りが最高潮に達した時のことであろう。臨場感に溢れた句になった。
亡き兄と再会待つや茄子の馬 (和談さん)
お兄さんが亡くなられたのはまだ最近のこと。作者の和談さんにとって、兄弟の中でも、格別の思い入れのあるお兄さんだったことだろうか。折しもそのお兄さんの初盆を迎える。中七の「再会待つや」に痛切な実感が募る。
以下次回、不定期掲載
あーあ、いろいろごちゃごちゃありがとうございますと30分ほどかかって書いたのがプレビューにしてからややこしくなって最後消えてしまった。明日気が向いて元気ならもう一回やります。