自句の背景
19 富士山を揺らして零余子蔓を引く (束束子) 6 にゃんこ、玉虫、◎きんつば、ナチ―サン、てつを
きんつばさんに特選を頂いたほか4名の方々に選をして貰い、辛うじて零点を免れることが出来ました。ありがとうございます。 「零余子飯が食べたいわ」と妻が言うものですから、近くの久米の森へと足を運びました。秋色にはまだ早くて、自然薯の葉が黄色く色づいていないので見つけ出すのに時間はかかりましたが、三角形の葉混みに足を止めて確認すると沢山の零余子。持って行った行楽用のビニールの敷物を丁寧に敷き終えて蔓を引くと「パラパラ」と大中小の零余子が敷物の上に落ちてくる。
少し高いところの物は小枝で叩き落とすが、それ以上の高い所は蔓を引きながら激しく揺さぶらねば落ちてこない。 というわけで蔓を引く。 そのたんびに「ゆっさ ゆっさ」と蔦叢は揺れ、樹林が揺れる。 そこで1句が浮かぶ。<久米山を揺らし零余子の蔓を引く> しかし久米山という山は地図上では無い。 それならば<久米の森揺らし零余子の蔓を引く> いや待てよ! そもそも「久米」という地名を誰が知っているのだろうか? と考えを巡らせながら更に「ゆっさ ゆっさ」
向こうに鈴鹿山脈が見えるから「鈴鹿嶺を揺らし・・・」 いや「伊吹山」ならどうかなあ まてよ
・・・・・・ と考えるうちに ついに「富士山」に到達した。 <富士山を揺らし零余子の蔓を引く>とすれば、どんな小さな山を持ってきて誰かが二番煎じの句を作っても「盗作だ」と主張できるな という結論に達したのである。
いい俳句、極め付きの句が多くの人を驚かすと、必ずそれを参考にし、誰かが関連句を作るので、「とどめを挿す」ような句でなければ勝てないのだ。
このような複雑な思考の末に出来上がったのがこの句です。 中部圏内の俳人が集まっているIT俳句会で「富士山」に共感してくれる方は少ないだろうと思ったのですが、5名の方に理解して頂いたのは嬉しかった。 ありがとうございます。
推敲の過程を公開していただき、ありがとうございました。
「富士山」まで突き抜けた大袈裟さに、ユーモアを感じました。
ありがとうございます。
久米→鈴鹿→伊吹→富士と嘘がどんどんエスカレートしていく過程がよく分かりました。嘘もこのくらいのスケールが欲しいですね。