自句自解
21 一対の懸崖菊の大枝垂れ
懸崖菊を作る技法があることを知りました。「一本の小菊を大きな株に仕立て野菊が断崖の岩間から垂れ下がっている姿を表現する技法」とのことです。地方によって技法が異なるようですが菊の愛好家にとって究極の菊かも知れません。
いつか本物の懸崖菊を見たいものです。荒波の上の断崖絶壁にむ下がる懸崖菊さぞ見事なものでしょう。
38 ほろ苦き秋刀魚の腸の懐かしき 1
秋刀魚もいつしか高級魚に。なかなか食膳に上らなくなった。最近有志五人での食事会があったがその和食に秋刀魚の塩焼きが出た。思わずお神酒を所望。美味しさは涙が出るほど骨まで戴いた。
75 秋祭り回し呑みして逸りたる
半田の山車まつりは勇壮でした。束子さんによればご本人も怪我されたとか。交差点での引き回しは方向転換をする必要が無い場所なのであくまでもショーでしょうが、山車に仁王立ちしたリーダーの一声での回転、あの時は確か三回転と思います。曳人の少ない山車は素通りでしたが、お互いの山車に明らかに競争意識が見られます。31台集合した桜広場では山車ごとに車座になって気勢を上げていました。酔いつぶれたご仁を真ん中にして。
84 献体に馳せるを思ひや冬始め 2 ◎
妻の両親は献体している。母親は102歳、介護施設で元気にしている。昨日老人の居場所づくりの場で歌の後その話になった。平均83歳20人ほどのお楽しみ会だったが献体の人は一人も居なかった。義父の時は3年後遺骨引き渡しに呼ばれ火葬までの2時間ほど医学生6人との会話の時間が持てた。彼らはお骨拾いにも参加、悲しみを共有してくれた。ただ献体には家族の同意が必要で未だに家内の同意が得られていない。
109 AIの功罪論議冬に入る 2
見送りのうしろや寂し秋の風
病む人の後ろ姿や秋の風
さて、どちらが芭蕉の俳句でしよう。一方はAIの作品です。「AI一茶くん」の作者が問いかけています。我が国の誇るスーパーコンピューター「富岳」がアメリカに抜かれ4位に順位を下げたとはいえコンピューター数台を組み合わせ時間を掛ければ順列組合せによりすべての俳句(過去、将来の)が網羅されるでしょう。ただ、聡太八冠始め将棋の世界でもAIを取り入れた研究が進んでいますが彼らは羽生世代とは違った形での研究とか。AIを味方に無駄な努力はしない。この辺にAIとの付き合い方のヒントがありそうですね。芸術、スポーツはもとよりあらゆる分野で避けて通れない課題と思われます。次々と新種を繰り出すウィルスなどとも共存の道の選択が最善でしょうか。
ナチ―サンさんの自句自解、興味深く拝見しました。人類が開発した画期的なテクノロジーは、それを使う人間の側のモラルが確立されなければなりません。国と国のエゴがぶつかり合っている私たちの地球。このまま果てしなく科学技術のみが進み、マインドの方は進歩しないとしたら。ぞっとしますね。