アイビーの俳句鑑賞 その3
アイビーの俳句鑑賞 その3
松明やジャムたっぷりのモーニング (弥生)
正月も松明けともなると子どもの新学期が始まり、世の中すべてのペースが平常運転に戻る。モーニングサービスでトーストにジャムをたっぷりつけるのも何時ものことだ。現代人のライフスタイルを巧みに詠みこんだ。中京圏以外にお住いの方には少し説明が要るかも知れない。名古屋市近郊の喫茶店ではモーニングサービスと称して、通常料金でコーヒーにトースト、茹で卵などがついてくる慣わしがある。
被災せし能登は雪らし七日粥 (ダイアナ)
能登地方の地震を詠んだ句が、今月の句会で目立った。その中で7点を集めた当該句。取るものも手につかない現地、追い打ちをかけるように天気予報では雪だという。それを案ずる作者。季語に「七日粥」を斡旋した作者のセンスが光る。
大根干すラインダンスの揃ふごと (てつを)
冬の風物詩の懸大根を、なんとラインダンスに見立てた愉快な句。ダンサーの足から大根を連想したのだが、実年齢は八十路を越えておられる筈のてつをさん、いやーお若い。
湯船にて感謝と夢の除夜の鐘 (和談)
しみじみとした味わいのある句。大晦日ならではの感懐。難を言えば、掲句は湯船で感謝しているのか、除夜の鐘を聞いているのか分かりづらいことか。その両方かも知れないが、ここは優先順位を決めて句にメリハリをつけたいところだ。
子の言葉素直に聞きて除夜の鐘 (ヨシ)
何時までも子どもだと思っていたが、いつの間にか立派に成長していたわが子。一年の最後、除夜の鐘を聞きながら虚心坦懐に子の言うことを聞けば、その感ひとしおだ。同時に作者の胸に去来するものは、この上もない充足感ではなかったか。私が特選にいただいた句。
なんとなく収まりついて年暮るる (ヨシ)
前句とはうって変わって軽妙な味わいの句。とにかく暮は忙しい。あれもせねば、これもしたいと気ばかり焦るが、少しも捗らない。よくしたもので絶望的な展開も時間が来れば、それなりに恰好がつくものだ。そうした年末の機微をうまくすくった。
間違える人間だもの老いの春 (無点)
惜しくも無点句となったが,相田みつをばりの人間賛歌が嬉しい。老いたとて後ろ向きになるな、明るく生きよう。またとない中高年者への応援俳句と位置付けたい。
以下次号、不定期掲載
アイビーさん、鑑賞していただきありがとうございます。
子の言葉素直に聞きて除夜の鐘 (ヨシ)
なんとなく収まりついて年暮るる (ヨシ)
「老いては子に従え」と母がよく口にしていました。最近そう思います。
もっともな事を娘に言われ、ほうほうと納得。頼りないと思っていたけれど大人なのだ。また一つ年を越し娘達に引き継いでいく年齢になったのだなぁ~と感慨に耽ります。