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スレッドNo.3490

アイビーの俳句鑑賞 その3

アイビーの俳句鑑賞 その3
例によってアイビーの俳句鑑賞3原則に則った駄文。お気に障ったら平にご容赦を。

捨鐘に夕日纏ひて花の散る (駄右エ門)
捨鐘は今から鐘を撞きますよという予告の鐘のことで、正規の数に含まれない。1点しか入らなかったが雰囲気のある佳句だと思う。雰囲気というのは、捨鐘、夕日、落花という、どこか日本人の美意識の原点を感じさせる3点セットがもたらした。単に、順番に3つ並べるだけではなく「夕日纏ひて」と、ひと手間加えたところが芸の細かいところ。

コンサート終えて乾杯風光る (ダイアナ)
ほかに点の入った句もあるが、あえて1点しか入らなかったこの句を取り上げてみたい。作者の個人的な体験、つまり作者自身が合唱かなにかのコンサートに出演した時の体験を詠んだものと推測する。もとよりアマチュアのこととて、練習通りに上手くいくか、あがりはしないかと不安のうちに出番が来た。案ずるより産むが易し、上々の首尾で終わった。やれやれの安堵の気持ちが季語「風光る」になった。実感の一句。

回り道ただこの桜愛でたくて (弥生)
特に用事はないけれど、折しも桜が満開だ。少し遠回りして帰るとするか。急用も無いことだし。日常生活にこうした経験は有りがちだ。予期した以上に桜が見事だ。遠回りした甲斐があった。なにか得をした気分だ。俳句の題材は日常生活の一寸した場面場面にあると痛感させられた。この句のように。

花の雨汝一献吾一盃 (和談)
一字を除き全部漢字でまとめた句。おそらく作者が意図してそうしたものと思う。「汝一献吾一盃」というやや古風な楚辞にとてもよく合っている。また季語の「花の雨」によく調和していて申し分ない。失礼ながら和談さんが当句会に初めて投句された時はズブの素人だったのが、爾来3年、よく勉強され俳句の何たるかを体得された。そのご努力に敬意を表したい。

花冷えやまたも閉じたる町の書肆(しょし)  (てつを)
町中の商店街はどこも大苦戦している。中でも小規模な本屋は廃業する店が後を絶たない。当地もご多分に漏れず、書店と言えば大手チェーンの系列ばかりである。そんな風潮を残念に思う作者。その気分が「花冷え」に象徴された。

この部屋に夫の歳月亀鳴けり (尾花)
作者の夫は早世されたと聞く。亡き夫への妻たる作者の哀切極まる心情がよく表現され、多くの共感を得た。ただ、「亀鳴く」は長閑な景色には似合う季語だと思うが、さてこの句にはどうだろうか。最適な季語だろうかとの疑問を感じるのだが。例えば夏の季語だが「花は葉に」とか。

窓の先山笑ひおり深呼吸 (無点)
惜しくも無点となったが、なかなか面白い視点の句だ。細かいようだが、歴史的仮名遣いの誤りを指摘したい。「笑ひおり」は「笑ひをり」でなければならない。また深呼吸をしたのは作者に違いないが、山が深呼吸をしたようにも取れる。

以下次号、不定期掲載

引用して返信編集・削除(編集済: 2024年04月19日 17:58)

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