秀句鑑賞
7 魂のあるを信じて盆の月 (ふうりん) 2
「人生はあざなへる縄盆の月」これある句会での私の句である。「上5中7は常套句で平凡、常套句を用いるにはかなりの腕が必要」とある方から評された。確かに「人生はあざなえる縄」は平凡、それだけに下5に苦心した。結果は3人の方に特選で支持された。その目で見るとこの句、一脈を通じるものがあり好感が持てた。8句選なら入れた句である。両句とも盆の月は動かない。
10 秋暑し不即不離とはいと難し (てつを) 2
不即不離は恐らく仏教語だろうがうまく使った。上5と下5がうまく収まっている。「即かず離れず」は句作の原則だが正にその通り。人生然り、人生に通じる措辞と思う。
27 掘るやうに担ぐがやうに踊りけり (ふうりん) 6
多くの方の賛同を得た。私の次点。3年ぶりに大府の夏まつりも行われたが、待ち焦がれた人並みで例年を上回る人出。主催者側はコロナと熱中症対策に追われたが身内からも数人の感染者が出て反省会で議論が紛糾した。盆踊りと言っても従来からのものは「大府音頭」と「大府ばやし」「大府小唄」のみ。10曲ほどあるが中に「掘って掘って担いで担いで」も入っている。いずれも中学生の太鼓で盛り上げている。でも最近は、時代の流れか「ど真ん中まつり」まがいの出し物が増え、次第に「盆をどり・鎮魂」から遠ざかっているのが寂しい。
29 名月を称ふ城址の陣太鼓 (森野) 5
城址についての連句、ご本人の解説があり地域での恒例となっている行事への住民の熱い思いを知った。一度お邪魔してその熱気を体験したいものだ。
73 葛の蔓切りて切りても切りもなや (てつを) 2
台風一過、切り残された蔦がはびこり出した。私の仕事だ。中7、下5が言いえて妙。やはり根を絶たねばと思うがそれが物置小屋の下に。妥協して「下部を切り、上は枯らす」作戦。この作戦で時を稼いでいる。
90 百幹の竹打ち合へる野分かな (えのころ草) 2
台風一過清々しい朝を迎えている。今回の台風は風が先行し台風がその後を追っているとか。良くわからないが台風も新型に進化しているのかも。いずれにしてもこの句、「百幹の竹」が打ち合っているのである。現場にいたら壮絶な風景だろう。風の息吹きと竹の咆哮。野分の状況を余さず醸し出している。