選句候補作品鑑賞
59 格子戸の連なる路地や青木の実 (弥生) 1
龍太の句「夕凍てのにはかに迫る青木の実」が歳時記の例句に出ていました。幽玄な気配すらする格子戸の続く路
地裏に紅い実を付けた今にも零れそうな青木の実。本格的な冬も間近かそんな気配を感じさせる素敵な句です。
60 楕円球蹴って走って冬に吼ゆ (ABCヒロ) 5
下五が良いですね。それと楕円球、例の合言葉「・・・ワン」以来ラグビー熱も盛んになりました。殆どルールは
知りませんが決死の顔でスクラムを組んでいる後ろで突っ立ってきょろきょろしているのが司令塔なんですね。
合図でスクラムの中にボールを入れ出てきたボールを素早く味方に渡す。冬に相応しいスポーツ。正に「冬に吼
ゆ」です。
68 捨て案山子スカートはだけあっけらかん (和談) 1
ユーモア満点。今年は選挙の年でした。巷では放置されたポスターをまま見受けました。一方、こちらは田んぼ。し
っかり始末をしてもらいたいもの。そうはいっても片付けられたらこの句に出会えなかったか。それにしてもスカー
トの案山子なんて見たことない。楽しませて戴きました。
72 枝折り戸の奥なる寺苑冬薔薇 (森野) 2
落着いた句ですね。やはり季語との取り合わせでしょうか。日本独特の雰囲気を醸し出しています。
このような句は国外では作れないでしょうね。作者の感性の豊かさを感じます。
93 くつさめの出る寸前の顔であり (アイビー) 2
この句最後まで迷った句です。何度読んでも面白い。確かにその通り、本人には気の毒ながら顔の表情としては
傑作の部類でしょう。能や狂言のお面に有ってもしかるべきと思います。通常くしゃみは予感が数度襲います。
これとの格闘です。最後の顔?、勿論恍惚感に満ちた顔ですよね、アイビーさん。お風邪を召さないように。