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スレッドNo.5077

アイビーの俳句鑑賞 その1

アイビーの俳句鑑賞 その1

柊やほのかに香り夫(ひと)を待つ (ヨヨ)
夫との待ち合わせの場所に柊花が咲いていた。句意はそれだけのことだが、これを5・7・5に纏めると俄然雰囲気が出てくる。俳句という定型詩の妙味だろう。柊は花が咲く時は葉の角が取れて丸くなり、辺りに芳香を放つ。ここらあたりに寓意が込められている、とすれば深読みのし過ぎであろうか。上五で切れているが、切らなくても別に構わないと思う。まあ、好みの問題だが。それと「夫」と書いて「ひと」とルビが振ったが、素直に「つま」と読ませてもよかったのではないか。


絵踏寺童女の墓と刻みあり (森野) 
歴史的事実としても「踏み絵」が春の季語にされるのは疑問だと思う。季語のもつ季節感が全くないからだ。アイビーの個人的な意見を述べても仕方ないことだが。絵踏寺はどこの寺か分からないが、恐らく隠れ切支丹がいた長崎県の五島列島あたりの寺と推測される。その寺に切支丹の故をもって罰せられた人の墓があった。被葬者は、刻まれた字からは童女であることが分かる。薄幸の童女の定めを思い、しばし感慨に耽る作者。淡々と事実のみを追い記述したに過ぎないが、読み手の側にかくも想像を掻き立てる、俳句の醍醐味だろう。

光るもの徐々に増えゆく雨水かな (弥生)
「雨水」は二十四節季の一つで2月19日頃に当たる。春の訪れを感じるのは気温ではなく日差しだろう。一足飛びに温かくはならないが、燦燦たる日差しは明るい。まさに「風光る」を体現するようだ。万物に光が満ち溢れる春。春を喜ぶ人々の心を詠んで過不足がない。丁度、雨水の頃にその思いが強くなる。

声高の病人ふたり日向ぼこ (塚口)
風刺がきいた一句。一体どこが病人なんだとツッコミが入るような二人。それでも、れっきとした病人なのだ。お互いの病気を嘆き慰めあっているのだが、辺りを圧する大声は、元気そのもの。三食に憂いはなく、はた目には結構な身分にしか見えない。けれども病人は病人である。現代社会の欺瞞を鋭く喝破した一句。が、嫌みがなく聞こえるのは上質のユーモアに包んでいるからだろう。

どんど焼漁師になると漁師の子 (尾花)
南知多町の師崎地区の左義長を詠んだものか。地区の5つの部落ごとに行われる左義長は、私も見たことがある。村の青年の通過儀礼の意味もあり、漁村らしい趣向を凝らした正月の行事である。村役は羽織袴に威儀を正すが、主役の青年達は褌一本で参加する。狭い村とてお互い顔なじみばかりだ。いきおい師崎中学の同窓会のノリで参加することにもなる。最近はそうでもないだろうが、漁師の息子だから、後を継いで漁師になることを当然と考える。また、世間もそれを当然視していたのである。

無駄な物捨ててしまおう春はそこ (コビトカバ)
冬の暗さから解放される春がすぐそこに来ている。春を迎えるに当たり、もろもろの足かせ手かせとなる物を、この際一掃しようと作者は考えた。この思考の過程は私ら年配者にもよく分かる。座五の季語を「春隣」「春近し」でなく「春はそこ」としたところに作者の工夫が見られる。そのために,当たりがソフトになり、俳句自体に若々しさが生まれたように思われる。

新春に夫従えて映画かな (ラガーシャツ)
昭和30年代、日本人がひたすら明日を信じて頑張っていた時代は日本映画の黄金時代でもあった。プログラムピクチャーという興行形態があり、邦画各社は年に百本近い映画を量産していた。ことに年末年始は映画館の掻き入れ時であり、ドアが閉まらないまま上映したものだ。ところがいつの頃か、映画を見なくなった。ところが正月のこととて映画を夫婦で見ることになった。もっとも奥さんの方に見たい映画があり、夫はつきあっただけなのだが。それでも久しぶりの映画である。映画の始まる前のわくわく感を久しぶりに味わったことであろう。

以下次号、不定期掲載

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ラガーシャツさん、楽しいお話を有難うございます。私の実感として婦唱夫随も悪くないと思います。それにしてもドラゴンズのキャンプ地の沖縄に行かれたとは驚きました。ひととおりのドラファンの域をはるかに超えて、ドラXXの境地ですね。(XXは放送禁止用語)

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アイビーさん映画の句鑑賞ありがとうございます。
ちょつと前までは俺に付いてこいの勢いでしたがこの10年程は
妻の言うなりの楽な生活を送っております。昨日まで奥方様が
熱狂的なファンのドラゴンズ沖縄キャンプに5日間行って来ました。
サイン帳を持って走り回る彼女を見てるだけの楽しい旅😀これも良し!

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尾花さんへ
コロナ騒ぎ以後、簡略化したようですね。褌の若者が縦横に走り回るのが売り物なのに、肝心の若者の褌姿が見られないのは期待外れです。これでは観光客は呼べません。

コビトカバさんへ
毎月、貴女の俳句を楽しみにしています。毎月何か新しい試みをされ、読み手にもその意図が分かるのです。

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鑑賞ありがとうございます!
いつも楽しみにしています^_^

春はそこは私も好きな下五だったので、良いと言って下さり嬉しいです✴︎

春は私は花粉にやられて弱りますが、ピンク色の自然たちが可愛くて好きですo(^_^)o

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アイビーさん、どんど焼きの句の鑑賞をありがとうございました。
今年、褌一本の青年はお見かけしませんでした。
海風が強く寒かったので何か羽織ってしまったのかもしれません。少し残念でした。

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