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スレッドNo.5405

アイビーの俳句鑑賞 その2

アイビーの俳句鑑賞 その2

春雷や鼻につうんと辛子和え (青麦)
上五で切れ字「や」を使って二物取合わせの句にした。辛子和は、酒の肴に飯の菜にと日本の家庭には欠かすことが出来ない。辛子特有のつーんとくる辛さが、好きな人には堪らない。特に、分葱や浅蜊など貝類を使う料理は、いかにも春らしい。日常的な一コマを描写して、配するに春雷を持ってきたのは妥当だ。

囀りや八ヶ岳ブルーてふ空に (ちとせ)
一物仕立ての句。意味の上では「囀り」は中七、座五の意味は繋がるので、上五で切れてはいるが一物仕立てと見なしてよい。倒置法を駆使して、主語を最初に持ってきたのが新鮮。なんと言っても「八ヶ岳ブルー」という措辞には感心した。抜けるような青空、つまり快晴の天候と、八ヶ岳に旅行した時のことが一度に分かるのだ。

たおやかに行きつ戻りつ花筏 (ラガーシャツ)
花筏をじっと観察した折の句と見受けた。一本調子で一定の方角に流されて行くのでなく、それこそ「行きつ戻りつ」しているようにも見える。それでいて決して一か所に留まらない。どこかへ流れ着いて、最後には消える。人生も同じことが言えないだろうか。来し行く末に花筏を重ね合わせ、ふとそんな感慨を催した。そんな様子を「たおやか」と作者は表現した。まことに意味深長である。

幹叩き機嫌伺ふ桜守 (ナチーサン)
私が特選にいただいた句。桜守は桜の木の木肌を叩き調子を見る。もし変調があればいつもと違う音がするのであろう。長年の職業的な経験で分かるのだ。中七の「機嫌伺ふ」の軽い調子が、また良い。AI万能の世の中、人間の領域にどんどん進出している時代に、職人芸、名人気質がなお健在な分野があるのが嬉しい。

新社員黒革靴の音硬し (にゃんこ)
靴音が硬いのではなく、新社員が初出社で緊張し硬くなっているのだ。それをしらっと「靴の音硬し」と言い切るのが俳句の呼吸というもの。このように俳句には「決めつけ」も必要だと思う。ここまで言っては言い過ぎじゃないかと自己抑制する必要はない。言葉は悪いが「いったもん勝ち」だ。

石蹴りのケンパの丸や花吹雪 (玉虫)
次から次に降ってくる花吹雪。地面に書いた丸が花吹雪で埋まりそうだ。幼かった作者自身と花吹雪、回想と現実の自分が混然一体となって幻想の世界へと誘う。無限に続くものでもあるかのような花吹雪。その中にいると、誰でも詩心が生ずるのである。読み手の側に、得も言われぬ懐かしさを催す一句。

ふららこの揺れは心の共鏡 (てつを)
共鏡は合わせ鏡のことで鏡を二つ合わせて物を見るときに使う。その共鏡を作者は比喩として使った。ブランコは誰も乗っていなくても微風でも揺れる。その様を人間の心の弱さに喩えた。一旦決めたことでも、外的な要因で挫けるのが人間だ。あるいは誘惑に揺れるかもしれない。私はそうした脆さがあってこそ人間なのだと思うが、作者は肯定も否定もしない。読み手の側に解釈を委ねた。

以下次号、不定期掲載

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拙句鑑賞ありがとうございます。

緊張ぎみの新社員への応援の気持ちを込めての句でした。
川柳の癖があって、どうも対象に踏み込み過ぎるようです。
「いったもん勝ち」に勇気をいただきました。
ありがとうございました。

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花筏の拙句鑑賞ありがとうございます。
  私の自宅は名古屋市昭和区の山崎川沿いにありまして桜の季節は
  毎年楽しませていただいてます。
  三階のべランから川面がよく見えて俳句をするようになり花筏
  などと言うものも覚えてよりいっそう花見が楽しみになりました。
  ありがとうございました。

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幹叩き機嫌伺ふ桜守 (ナチーサン)
 一昨年でしたか大府市が市制50周年を記念して市の木に桜が花にはつつじが追加指定されました。クロガネモチとクチナシを合わせて賑やかになりました。よそ者の私も今年で63年目を迎え、骨を埋めるべきこの地も一昔前の桃の木は現在地名で残っているのみ。
最近とみに増えてきた桜にも愛着が湧き毎年桜巡りをして写真に収めています。
特選に選んでいただきまして有り難うございました。光栄です。

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