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スレッドNo.5414

アイビーの俳句鑑賞 その3

アイビーの俳句鑑賞 その3

廃業を告げ来る電話冴返る (犬伏)
新派の舞台を見るような一句。電話で廃業を言ってくるほどだから、作者の友達か、よほど関係の深い間柄なのだろう。寄る年波からある程度、作者も予想していたかも知れない。「やっぱりなあ」と得心したことではある。止むを得ないながら、一抹の寂しさを覚える作者。折から、寒さがぶり返した。「今年はいつまでも寒いなあ」と一人ごつ作者なのであった。

揚雲雀ひこうき雲は描き足し中 (尾花)
高点を得た一句。揚雲雀を目で追っていくと、同じ高さに飛行機雲を見つけた。その飛行機雲をよく見ると先頭に機影らしきものが、雲を吐きながら進んでいる。そこを見逃さなかった作者の慧眼、観察力に敬意を表したい。かくして雲雀を詠んだものが、途中から飛行機雲に主役が変わったのである。面白いものを見つけたら、臨機応変に対処する柔軟さに拍手。座五に推敲の余地はありそう。「揚雲雀雲吐き進む機影あり」とか。

句会終へ神社に満つる夕桜 (ダイアナ)
句会は曜日を決めて月1回、稀に2回開催されることが多い。開催日が予め分かっているから、開催日までに自信作が出来ればよし、出来ていなければ焦る。さて句会当日、思いのほか点数が入り、やれやれと安堵の胸を撫でおろした。折しも桜が見事だ。帰りに見事な桜なら、往路も見事だった筈で、桜のことは眼中になかったのだ。余裕が無かったのだ。その辺の心理を「満つる夕桜」で表現した。特に時間的経過も分かるように「夕桜」としたところが上手い。

感情のなきAIや亀鳴けり (うらら)
「感情」、ひっくり返して「情感」。どちらもAIには解せない。人間の領域は機械ごときが冒してはならないのだ。この句の主題に「亀鳴けり」を持ってくる発想が出色だ。なんとなく響きあうのだ。この「なんとなく」は俳句のミソで、理路整然と説明できないことが俳句には多いのだ。要は、分かるか分からないかである。身も蓋もない結論になってしまった。ところで「AI一茶」なる俳人が出現して久しいが、評判はどうであろうか。

整へし髪あらあらと桜東風 (ふうりん)
穏やかな日ばかりでなく、春は風の強い季節でもある。この作品は桜の頃の東風ということで、せっかく整えたヘアスタイルが、一陣の風で台無しになってしまったと嘆くユーモラスな句になった。特に私のように髪の毛が潤沢でない場合は悲惨なことになる。と言っても、髪の毛は髪の毛、命にかかわる話ではなく、その場限りの話題に過ぎない。「あらあら」に宛てる漢字によってニュアンスがガラッと変わる。

姿勢よく改札通る受験の子 (ヨシ)
少し前に受験シーズンも終わったが、悲喜こもごものドラマが展開されたことだろう。この句の場合、改札口を通る時でさえ姿勢が良いと言う。一事が万事、すべての挙措が自信に満ち、堂々としているのであろう。きっとこの受験生は見事に合格したに違いない。読み手に結果まで確信させるほど、場面の切り取りが上手かった。とりも直さず作者の手柄だ。

春雷や放浪愛猫怯えさせ (茶々)
愛猫家の茶々さんらしい一句。犬にしても猫にしても雷には弱い。普段は元気にしていても、遠くでピカッと光った途端、一目散に寝床へ逃げ込む。きっと犬猫の祖先も雷に弱かったのであろう。いわば太古からの種の記憶とでも言おうか。そんな猫の生態を句にしたが、欲を言えば怯えるにしても、寝床でブルブル震えていたとか具体的な描写があればなお良かったと思う。

以下次号、不定期掲載

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35  春雷や放浪愛猫怯えさせの句
アイビー主幹さん、ふうりさん、有難うございました。
ソファーに腰掛けてテレビを見ていた春雷の夜のこと。雷の速度は時速約40分だから、まだ良いかと思っていたら急に
ドドンと我が家か、ピカッとしたのは前のアパート、落ちたのかと思った。雷が来るときは大概我が家に轟く。高圧線が近くを通っているので落雷するのかな。雷鳴で愛猫は私の足元へ、私は怖かったです。猫ちゃんを充分に見ていなかったので、アイビーさんのご指摘のとうり描写が不十分でした。現実度の高い句つくりを。有難うございました。

。 

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