観賞の続きです
13 身に入むや円楽享年七十二 (アイビー)
去年は小三治、今年は円楽。落語好きな私は辛いです。
慶弔俳句、なにげに七十二才という情報読み込まれて、そこをいただきました。しかし、まだお若い。
32 飾られし菊花堆肥となるとかや (観音寺)
花を咲かせるために土を作ります。
其の花が次世代の堆肥になる、万物は流転す、ですね。
41 おしろいの喪中の家に咲き満てり (蓉子)
白粉花は夕方近くに花が咲くので、夕方から夜の喪の家の風景ですね。
咲き満てりが、何か灯明のような明るさをもっているような、陰影礼賛の句をいだきました。
43 撓なる渋柿に傷ひとつなし (いちご)
おいしそうに見えても油断は禁物、これは柿好きの方でないと読めない句です。
渋柿は先が尖って細長いもの、エナメル質を感じました。
65 弁論のテーマ墨書す文化祭 (玉虫)
好き嫌いで申しましたら、一番大好きな句です。
墨書すで、字体の勢いや大きさまで伝わってまいります。
作者が文化祭を楽しまれたからこそ読める句です。
83 木の実落つ音なく何か切れるらし(ABCヒロ)
切れる、何か喪失感みたいなもの、秋ですもの。
最後に暗示めいて、こちら側に考えさせる余韻がうれしいです。
今回は季語への愛情が感じられる句が印象的でした。
また、自分の拙い句を選んでいただき、ありがとうございました。
私のような怠け者は、それを糧に細々と俳句をやっていきます。
13 身に入むや円楽享年七十二
アイビーの句を取っていただきました。笑点のレギュラーで著名な噺家でしたが、私より若い七十二で逝きました。同級生の誰彼も逝ったとか、とかく気の滅入る昨今、「身に入む」は偽りのない実感です。