アイビーの俳句鑑賞 その2
アイビーの俳句鑑賞 その2
神在月参詣終へて出雲そば (ダイアナ)
出雲に神々が集まるということは、出雲からすれば神在月ということになる。ということは舞台は出雲の国、参拝したのは出雲大社ということになる。どういう事情で島根県を訪れたのか、私は偶然知っているが、ここでは明かさない。物見遊山ではないことは確かだ。願いが叶ってお礼参りに訪れた出雲大社。そこに一筋の光明を見た。さぞ出雲そばは旨かったことだろう。発想の逆転が面白い一句。
残菊や路地にかをりを誘う風 (森野)
菊の薫りは遠く離れていても匂うほど薫る。ところが、ことさら原因と結果を曖昧にして「かをりを誘う風」とした。まるで風が吹くから菊が薫ると言わんばかりだ。もし、私の解釈が見当外れであっても、中七から座五の「路地にかをりを誘う風」は秀逸な表現だ。
大屋根のリングに出でし後の月 (ふうりん)
出だしはどうなる事かと思ったが、大阪万博も好評のうちに終わった。大阪万博の象徴とも言うべき大屋根のリングと月の取り合わせが面白い。人工の産物である大屋根と自然物である月を並べたところが新鮮な驚きがある。
木の葉髪これまでのことありがたう (尾花)
今月の巻頭句「帰り花」の句もあるが、ここではこの句を取り上げてみたい。端的に言って読む方の想像力を刺激する句だ。まず姑と嫁を思い浮かべる。元々他人同士が同居する。両者の間には様々な葛藤があったであろう。ところが、寄る年波で気の弱くなった(あるいは死期が迫っているのかも知れない)姑。しみじみとこれまで世話になったと感謝する姑。たった17文字から、これだけイメージが湧くのだ。俳句の面白さであろう。
直箸のうたげ続くや夜半の秋 (てつを)
「直箸」は一つ料理を銘々の箸で食べる、鍋物か何かと解釈した。よほど気のおけない友人との宴か。話に花が咲き時間の経つのも忘れる。気がつけば「おや、もうこんな時間か」ということになる。斯くして秋の夜は更けて行く。しみじみとした味わいを楽しみたい。
小包を開く前から林檎の香 (ヨシ)
いつも林檎の季節になると送ってくれる知人がある。今年も宅急便が届いた。果たして林檎の甘い香りが、包みを開ける前から漂ってくる。小包を開ける時のワクワク感がよく描写されている秀作。
薬局の名入りの袋下げて冬 (玉虫)
薬局の名入りの袋下げたことと冬が来たこととは、まるで関係がない。無関係の事象を並べ、一編の詩に仕立てたお手並みは見事。所謂「俳句の呼吸」を感じた。「俳句のコツ」と言い換えてもよい。
頑なに子が口閉ざす榠樝の実 (ナチーサン)
「子が口閉ざ」しているのか、理由は問うまい。多感な少年期にはありがちなことである。榠樝の実はよく言えば個性豊か、悪く言えば不細工な顔をして、その辺に転がっている。転がる様は無造作という他ない。無口な少年のイメージと重なる。そこが作者の意図したところでもある。何らかの寓意を感じ取るべきだ。
持ってけと太き皺の手大根引く (あんのん)
農家の親父さんの、ぶっきらぼうな口調が目に浮かぶようだ。「太き皺の手」と描写したところも「上手いなあ」と感じた。登場する人物が生き生きとして、血が通っているのが私の印象だ。これは作者の手腕によるものだろう。
以下次号、不定期掲載。
とんだ間違いをしました。玉虫さん、失礼しました。尾花さんの指摘があるまで気がつきませんでした。尾花さん、黙っていれば巻頭と個人別総合と二冠でしたのに、フェアプレーの精神を発揮されました。敬意を表します。
アレッ⁈ 間違いに気づきました!
おはようございます。
玉虫さんの11月の個人別総合点は19点でトップでした。
尾花は18点と及びませんでした~!
気づいてしまったので、アイビーさん訂正をお願いいたしますねー。
薬局の名入りの袋下げて冬
アイビーさんに句を鑑賞して頂きました。
ありがとうございます。
何故だか寒くなると体調が悪くなる家族。
毎年一回は病院のお世話に。
薬を頂いて薄い袋なので薬局はもとより、患者の名前も透けて。
冬が来た!そんな気持ちになります。
退院されてゆっくりされる時間は持たれましたか?
なが~くこの句会にお世話になりたくて、アイビーさんに御自愛していただきたいのです。
今月は五句全て得点出来ました!
ドン底あり、こんな月もある。老け込んでる暇がありません!