選句候補作品鑑賞
33 陸奥の湯宿初雪にして根雪 (馬渡谷) 1
初雪にして根雪と言うのだから豪雪地帯が想像される。この句は湯治客として滞在しているのだろう。常連客とも思える。雪を見ながら感慨にふけっている様子が自然に表現されていて読後感が爽やか。
34 当主にて終ふ湯やどの冬構 (かをり) 3 ◎馬渡谷
有名な名湯だろうか。観光客が一段落した深夜、仕舞湯につかりながら来たる冬場の段取りなど思案している当主。作者は33の句とは異なり立場を代えて詠み作品にしている。手慣れた手法と言うほかはない。選が二人とは厳しい。
追伸、上記は選段階での感想。発表後自解、選者のコメントを知り読みの浅さを思い知った。一句の中に経営者の葛藤など知る由もなく字面のみ見て安易に解釈したが、現地を踏まえた句の奥深さには遠く及ばないことを痛感した次第。
50 初冬の夜道へ誘う電飾衣(和談)
この句無点句だが心惹かれた句だ。クリスマスが近づくと町並みが明るくなる。特に子供の居る家はきらびやか。田舎も同様、駅前や商店を起点に電飾の帯が流れる。作者はこの現象を捉え句に仕立てた。特に中七が生きているのでは。無点とは惜しい。
68 足音に日々の疲れや年詰まる (ヨシ) 2 ◎ふうり、
年末ともなるとついいらいら、身近なものに愚痴りたくなる。その疲れを我が足音に感じたというのだ。俳句は五感を働かせる詩形と言うが、人は近い将来幾つか感覚を失ってもひとつでも残っていれば大丈夫だが常日頃からの健康管理が大事という事か。日常生活をさりげなく詠んだ佳句と思う。
69 吾子の名の縫い取りありぬ吾の手套 (ダイアナ) 4 ◎茶々
子どもが成長し用をなさなくなった手袋、捨てがたく愛用している作者。手袋には縫い取りが。懐かしい。親子の情愛が交差しながらも伝わってくる佳句。私の旧作に ❛冬萌や孫より下がるスニーカー❜
がある。この句は勿体ない精神での作。2足あるが現役で交互に私のお供をしてくれている。