入選候補作品鑑賞
71 木の葉髪鏡の中の幾山河 (胡桃さん) 2
木の葉髪の句がもう一句ありました。「この世に悔いも・・・」でした。いずれも人生の境遇を詠んだもので心に沁みました。この句は鏡の中に人生を凝縮、木の葉髪を媒介として。心象句として詠ませていただきました。
72 赤い糸何処へ繋がる秋の星 (ヨシさん) 3
赤い糸と言えば織姫と彦星。秋の宵、星を眺めながら作者は何に思いを馳せているのでしょうか。中七が意味深、人生の来し方、行く末でしょうか。それにしても赤い糸が気になりますね。
77 冬菊や英霊二十八柱 (アイビーさん) 1
柱は神、英霊を数えるときに沿える語とあります。私の故郷からも30人ほどが出征、英霊となりました。いとこもその一人です。海の見える高台の一角に整然と並んでいます。階位と氏名の側に18歳とあります。海軍でした。最後の日に沖合で別れを告げたそうです。正装の写真が残っています。冬菊が切ないです。
89 潮騒や松色変へぬ御用邸 (アイビーさん) 3
数年前に廃校になった母校の中学校は潮騒の中灯台の膝元にありました。背丈の低い松は並べて傾いています。松は終生色を替えないのでお目出度いとか。今真っ盛りの紅葉とは対比の存在です。御用邸を想像するうちについ故郷に思いを馳せていました。
90 降り頻る木の葉の中の女人堂 (胡桃さん) 4
71の句と読み合わせると何か相通づるものが感じられます。女人堂とは尼寺の事でしょうか。晩秋のひと時尼さんの法話を離れた人生の語らいが聞こえてくるような気がします。
91 染め尽くす紅葉天城を越えてなほ (森野さん) 5
今紅葉たけなわ、骨折のため自由の利かぬ身、袋田の滝(茨城県)、 黒部渓谷の紅葉などをネットで楽しんでいます。天城越えする紅葉、それでもなおと紅葉前線を実感している作者。「染め尽くす」の上五が力強いですね。元気の出る句です。
94 何故の長き祈りぞ霧の宮 (岩座神さん) 1
神秘的な霧の中の神社での祈り、性別、老若など想像をそそられます。が、最後は・・・作者自身かもとも。